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ユルさが魅力!700年以上続く佐賀県神埼市の「尾崎人形」に会いに行く

「尾崎(おさき)人形」を知っていますか?陶器で作られ、コロンとしたフォルムのこの人形は、素朴で愛らしく、心にそっと寄り添ってくれるような温もりがあります。今、再注目されつつある尾崎人形を訪ね、「尾崎人形工房」に行ってきました。

尾崎人形って?

高柳さん(右)と城島さん(左)。城島さんは元々雑貨店を営んでおり、尾崎人形を商品として仕入れる中で高柳さんと知り合い、徐々に手伝うようになったそうです。
訪れたのは佐賀県神埼市尾崎にある、「尾崎人形工房」。ここでは尾崎人形の製作が行われており、絵付け体験をすることもできます。
神埼町尾崎西分地区で700年以上の長きに渡って伝わる「尾崎人形」は、時代の流れの中で何度か途絶えながらも復活・継承されてきました。現在は「尾崎人形保存会」の手によって再興され、高柳政廣さんと城島正樹さんの二人が継承しています。
工房の近くに来ると、可愛い看板が案内してくれます(写真左)。作り手の高柳政廣さんの自宅内にある工房。5台ほど駐車も可能です(写真右)。
土笛にもなっている、スズメの尾崎人形。左が絵付け前で右が絵付け後。

尾崎人形は、伝承によると元寇(弘安の役)の際、捕虜になった蒙古軍の兵士が故郷を偲んで人形を作り、吹き鳴らしたことが始まりといわれています。青、赤、黄の3色が伝統色です。
息を吹き入れると「ホーホー」と素朴な音が鳴る土笛になっていたり、人形の中に玉を入れ、振ると柔らかな音が出る土鈴になっていたり、尾崎人形には子どもが喜ぶ仕掛けがたくさん施されています。現在は40種ほどのバリエーションがあり、全てが手作業で作られているため、一つ一つ微妙に表情や趣が異なり、味わい深いものがあります。

尾崎人形はどうやって作られるの?

季節によって乾燥時間が大きく変わるため、土の扱いにはコツが要ります。

城島さんに作り方を見せてもらいました。材料となるのは粘土。昔は地元の田んぼ付近で採れる、陶器に適した土が使われていました。しかし粘土を採れる田んぼを探すのが難しくなっており、現在は有田の陶土を扱う会社で尾崎の土に近い配合の土を作ってもらい、製作しています。それでは、制作工程を紹介しましょう!

【工程1】(写真左)、【工程2】(写真右)

【工程1】石膏型に粘土を詰め、中が空洞になるように中央をくぼませます。左右の空洞の大きさがピタリと合うように作るのにも技術と経験が必要です。
【工程2】両側がきっちりと接着できるよう、接合部にヘラでキズをつけます。キズをつけることで噛み合わせが良くなります。

【工程3】(写真左)、【工程4】(写真右)

【工程3】接合部に水をつけた後、右と左、2つの石膏型を合わせギュッと押します。左右がぴったりと合うように。
【工程4】2時間くらい置いたら中の粘土を取り出します。石膏型を外すと、思わず「美味しそう!」と声をあげてしまいます。色・形がまるで人形焼のよう。

【工程5】(写真左)、【工程6】(写真右)

【工程5】「バリ」と呼ばれる余分な粘土をヘラでこそげ落とします。こそげ取った後は、手の指で優しく滑らかにならします。
【行程6】押印をします。ググッと、深く押していました。

【工程7】(写真左)、【工程8】(写真右)

【工程7】中の空洞部と繋がるように金属製の丸パイプで空気穴を開けます。丸パイプをギュッと差し込みます。
【工程8】吹き口を作ります。吹き口は斜めに作ります。微妙な角度が大切!

【工程9】(写真左)、【工程10】(写真右)

【工程9】1週間程度乾燥させます。写真左奥が乾燥前、右手前が乾燥後の状態。
【工程10】800度の窯で6時間ほど焼き上げます。尾崎人形工房では2台の窯を使って焼いています。

【工程11】

【工程11】焼き上がったものに白い下地材を塗り、着色したら完成!
吹く時に口にくわえる部分に着色はしません。真偽のほどは定かではありませんが、「『土のもの(土で作られたもの)』を口につけると虫下しに効果がある」との言い伝えがあり、転じて、子どもの健やかな成長を祈る願掛けの意味があるといいます。

尾崎人形の絵付け体験をしてみよう!

城島さんに教えてもらいながら、挑戦してみました。今回はスズメをチョイス!
尾崎人形工房では絵付け体験ができます。料金は1000円(税込)。所用時間は30分から1時間程度です。1人から受付けており、一度に最大8人まで。作れる人形の種類は日によって異なりますが、常時5種類以上から選べます。青、赤、黄の伝統色の他にも、好みの色を用意してもらえます。気軽に相談してみましょう。
自分で描くと、愛着もひとしお。

完成品がコチラ!色が滲んだり、はみ出たり、それもご愛嬌。世界に一つだけのとっておきの尾崎人形の完成です。旅の思い出や大切な人へのお土産にいかがですか?
店内には国内外のアーティストとコラボした作品が展示してあります(非売品)。どれもポップでカラフル!尾崎人形の概念を覆す作品も。ぜひ絵付け体験のデザインの参考にしてくださいね

海外アーティストの作品は色使いも独特で引き込まれます。

尾崎人形の新たな展開

左がBEAMSとのコラボ商品「相撲取り」。右奥が従来デザインのものです。

今、尾崎人形は多方面で注目されています。服飾ブランドのBEAMS(ビームス)とのコラボ人形もその一つ。このコラボにより、海外からの顧客からも注目されることに!(BEAMSのインターネットサイトから購入可能)

絵付けキットの人形はスズメの形、1種。

また、コロナ禍で始まったのは、自宅で楽しめる「絵付けキット」の販売(1430円、税込)です。素焼きの人形と3本の絵筆、5色の絵の具が入っいて、「佐賀一品堂」のサイトで購入可能です。
佐賀一品堂 https://sagaippindou.stores.jp
キットが届いたら、まずは人形を触ってみましょう。少しザラザラした人形の手触りにドキドキするはず。どんなデザインにするか考える時には、きっとワクワクしてしまうはずです。着色する時にはちょっと失敗してクスクス笑ったり、土笛の音色にうっとりしたり。いろんな想いを込めて、誰かにプレゼントするのも素敵ですね。きっとあなたのお家時間を素敵に彩ってくれるはずです。
イベントなどで不在のことがあるため、体験希望の際は電話で予約を。また絵付けの出張教室も行っています(最大30人)。電話番号 0952—53—0091

尾崎人形工房(高柳政廣さん邸内)

佐賀県神埼市神埼町尾崎546

https://www.monsen.jp/ozaki_ningyo/

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