2024年01月29日

馬肉生産量日本一の熊本の老舗「千興ファームグループ」の歴史と馬刺しのアレコレ

熊本県は言わずと知れた馬肉・馬刺し王国。馬肉を食べる文化は東北地方などにも見られ、生産においても熊本と東北地方で全国の9割ほどを占めているが、その中でも圧倒的な差で日本一に君臨しているのが熊本県である。その熊本で馬の生産・肥育から小売までを一貫して行っているのが『千興ファームグループ』。千興ファームグループの馬肉に対するこだわりに触れながら、鮮馬刺しの美味しさの秘密に迫ってみよう。

安土桃山時代までさかのぼる熊本の馬肉食の歴史

熊本城にある加藤清正像

一説によると熊本で馬肉を食べるきっかけとなったのは、安土桃山時代の朝鮮出兵の時だという。熊本の初代藩主・加藤清正が戦地で食糧難に陥り、死亡した軍馬を食したのが始まりで、その美味しさをお膝元の熊本に広めたといわれている。その後、仏教思想の影響で肉食が敬遠されていた江戸時代にも、馬肉を“桜”と言い換えるなどして、脈々とその食文化が受け継がれてきた。馬刺しは県民にとっても高価なため日常食とまではいかないが、県内には馬刺しを専門、メインで取り扱う精肉店が数多くあり、特別な日の、そして来客をもてなすためのご馳走として食生活に根ざしていることが分かる。

世界で初めて生食用食肉でSQFを取得した千興ファーム

千興ファーム代表取締役社長 菅 浩光さん

御船町にある『千興ファームグループ』は、馬の肥育から加工、小売りまでを一貫で行っている企業。馬刺し専門精肉店「菅乃屋」からスタートし、2000年から馬刺しおよび馬肉製品生産を開始。HACCP対応可能な工場を持ち、2002年5月には、オーストラリア政府が開発した食品安全認証制度SQFを、生食用食肉として世界で初めて取得した。年間生産量は馬の頭数にして2,000〜2,500頭。カナダ、フランスから輸入した1歳半〜2歳の仔馬を約1年間肥育し、一部ではあるが自社牧場で繁殖も行っている。馬はノルマン種というばんえい競馬にも使われる大型の馬で、出荷時には体重が900kg〜1トンにもなるという。
同社では1頭の解体処理から加工、小売のパッケージまでを最短3時間で行い、一気に急速冷凍。一連の工程を一貫して行うため、衛生的に鮮度を保ったまま加工ができる。馬は生食が認められている唯一の肉であるが、私たちが安心して鮮度の高い馬刺しを口にできるのには、このようなたゆまぬ企業努力があることは言うまでもない。

千興ファームグループの直営店『菅乃屋』

菅乃屋銀座通り店
菅乃屋銀座通り店の馬刺しランチ(3,800円)

千興ファームグループは馬肉料理のレストラン『菅乃屋』も運営。銀座通り店、新市街店、熊本駅店、そして熊本空港にある空港店の4店舗を展開している。馬刺しや桜しゃぶしゃぶ、馬焼きといった、王道の馬肉料理を味わうなら新市街店へ。鮮度の良さはもちろん、生産者直営ならではの希少部位に出会えることもある。銀座通り店では美しい盛り付けにもこだわった、独自の馬肉創作料理を提供。これまでの馬肉料理の概念を覆す新感覚の味は、何度訪れても新たな喜びと感動をもたらしてくれる。

ネットでも購入可能、鮮馬刺しの美味しい解凍方法を伝授

千興ファームグループの商品は公式オンラインショップをはじめ、多数のネットショッピングサイトで購入可能。日本全国、どこでも家庭で上質な鮮馬刺しを味わうことができる。冷凍で届く鮮馬刺しを一番美味しく食べられる解凍方法は氷水解凍。大きめのボウルに水と氷をたっぷり入れ、まずは水を十分に冷やす。その氷水に鮮馬刺しを真空パックのまま入れる。ブロック肉100gなら1時間ほどで解凍完了だ。パックの周囲に薄い氷の膜ができる状態が理想的だという。時間がない場合は流水解凍でもOK。解凍後は肉目に対し垂直に厚さ2mm程度にスライスして盛り付けるだけ。肉を切るのに自信がない人は、初めからスライスした状態で届く商品もあるので、そちらを購入するといいだろう。また、鮮馬刺し以外にも煮込みやハンバーグなどの加工商品も販売している。