2024年03月01日

国際品評会で受賞多数「阿蘇ナチュラル・ジェイファーム」の神業とは?

DLG、IFFA、SUFFA。いずれもドイツで開催される、国際的にも権威ある食品の品評会である。それらのコンテストのハム・ソーセージ部門に出品し、最優秀の金メダルだけでも通算100個以上受賞という、驚異的な受賞歴を誇るのが熊本県南阿蘇村にある『阿蘇ナチュラル・ジェイファーム』だ。その品質へのこだわり、おいしさの秘密はどこにあるのか見てみよう。

創業時から変わらぬ本場の味の追求

『阿蘇ナチュラル・ジェイファーム』の前身・阿蘇ナチュラルフーズ(阿蘇自然食品)の創業は1987(昭和62)年。「食の里帰り」をコンセプトに、本物・健康・安全という食の原点に根差した製品作りを行うため、創業者であり代表の森光臣氏の故郷である阿蘇の地に誕生した。創業時から現在まで守り続けられているのは、森氏の師匠であるドイツ人マイスターの教えに忠実に、本場のハム、ソーセージの味を再現すること。

直火式スモークハウスで炭火乾燥
天然の腸に手作業で詰めていく

ハーブを飼料に配合した国産(ほとんどが九州産)のハーブ豚と阿蘇の清涼な水を使い、独自にブレンドしたスパイスと塩を手で擦り込む。それを羊や豚の天然腸に詰め、直火式スモークハウスで炭火乾燥。炭火での乾燥は温度管理が非常にデリケートで、その日の天候、気温、湿度等で細かい調整が必要になる、非常に手間のかかる作業だ。仕上げのスモークに使用するチップも、九州の山で伐採された山桜を使用。その山桜のチップも春から秋の晴天が続く日を狙って、スタッフ総出で手作りしているという。また、スタッフにはドイツの食肉加工マイスター有資格者がおり、妥協のない本物の味を追求している。

国際品評会への出品は自分たちの仕事の正しさを確認するため

国際的な品評会への出品は2000(平成12)年のSUFFA(ズーファ)が初めて。初出品ながら9品目中8品目でメダルを獲得し、その後5大会連続で金メダルを受賞した。2008(平成20)年からは、世界最高峰とされるDLGに出品。その後は2015年、2016年を除き毎年出品を続け、その多くが金メダルを獲得している。惜しくも金メダルを逃した品も銀メダル、銅メダルを獲得しており、選外になった商品は1つもないという驚異的な結果を残している。
DLGとは、1885年に設立されたドイツ農業協会主催の国際品質競技会で、世界で最も古く、最も権威のある最大規模の品質競技会。見た目、色、味、香りに加え食品添加物検査や減量調査も行われ、チェック項目は200を上回る。それらをすべてクリア、満点を取った品だけが金メダルを獲得できるという厳格なものだ。中でもハム・ソーセージ部門での受賞は名誉とされ、DLGでメダルを獲得することはドイツ国内、欧州はもとより、世界中で評価されることになり、世界中のハム・ソーセージマイスターが目標としているという。
こういった国際品評会へ主品する理由は「自分たちの仕事が間違ってないと確認するため」だという。「本場の味、本物の味を追求していますが、自分たちだけの評価ではそれが正しいのか分からなくなってくる。国際基準の審査を受けることで、日々行なっている仕事が間違ってないと自信が持てます」と森氏。また、品評会用に特別に用意した品ではなく、通常販売している商品が評価対象となっているため、常に品評会を意識した仕事をすることがモチベーションにもつながるという。

阿蘇の自然の中で本物の味を、直営レストラン「バイエルン」

直営レストランバイエルンにはショップも併設
スライスソーセージと腸詰めの盛り合わせ(2,000円)※写真は二人盛

『阿蘇ナチュラル・ジェイファーム』の商品は福岡、熊本、大分の有名百貨店等にある直営店のほか、オンラインショップでも購入可能。そのラインナップを見ると、一口にハム・ソーセジといってもこれだけの種類があるのかと驚かされる。また、工房がある南阿蘇村では直営レストランの「バイエルン」も運営。「スライスソーセージと腸詰めの盛り合わせ」などのほか、あか牛のステーキ、ハンバーグなども味わえる。ソーセージといえばパリッと弾ける食感と溢れる肉汁が最高だと思いがちだが、こちらのソーセージで感じるのは程よい弾力、口に広がる肉の旨み、そして鼻から抜けるスモークの芳醇な香り。これこそが本物なのだと気付かされる。細部にまで行き渡った職人こだわりの仕事を堪能しよう。