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屋久島の島々

 屋久島は、鹿児島港から南へ160km、大隈諸島に浮かぶ東西約27km、南北約25kmの島です。九州最高峰の1,936mの宮之浦岳を擁し、海岸付近まで山が迫り島全体が山のように見えることから、洋上アルプスとも呼ばれています。山容は大きく、登山口から中央部の山々まではいずれもロングコースとなり、山中2泊を要します。また、亜熱帯性気候に属し、「1ヶ月に35日は雨が降る」と表現されるほどどしゃぶりの雨が続き、冬には山頂付近では豪雪となり1mを越える積雪も稀ではありません。このようなことから、屋久島登山は、しっかりとした登山計画と装備、そして相応の体力が必要と言われています。

屋久島の島々
  • 宮之浦岳宮之浦岳

     巨石とヤクザサで覆われた宮之浦岳(みやのうらだけ)の登山経験者の多くは、豪雨や強風など自然環境の厳しさを感じたことがあるかも知れません。その一方で、好天に恵まれたときは、山頂は360度の眺望をさえぎるものが無く、第2峰1,886mの永田岳、1,800m台の山々が続く稜線、深い屋久杉の森、青い海の遥か遠くには開聞岳などが広がり、登山者を魅了してやみません。ヤクスギランドから林道を上がったところにある「淀川(よどごう)小屋入り口」が、最もアクセスしやすい登山口ですが、山頂まで約6時間もかかります。

  • 大株歩道大株歩道

     屋久島では、樹齢1,000年を越えた巨大な屋久杉がひしめきあい、その間を縫うように登山道が続いています。世界遺産に登録された「縄文杉」は標高1,300mの山深い場所にあります。木製の立派な歩道が整備されていますが、最寄の「荒川登山口」からは片道10.7kmもあり、4~5時間ほどかかります。縄文杉に至る登山道を「大株歩道」と呼び、翁杉、ウィルソン株、大王杉、夫婦杉など、屋久島を代表する杉が群をなし、そばには稜線へのアタック基地となる新高塚小屋等が整備されています。

  • 白谷雲水峡白谷雲水峡

     「白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)」は、屋久島の玄関口の宮之浦から約12km。原生林が茂り、花崗岩の川床を流れる渓流が見事で、周辺散策に多くの観光客が押し寄せます。ここも代表的な宮之浦岳登山口の一つで、峡谷沿いの楠川歩道を進むと、約1時間で大型の無人小屋が見えてきます。さらに1時間ほど歩き、脇に逸れ急坂を登って行くと、映画「もののけ姫」の舞台となった巨大な「太鼓岩」があります。屋久島の名峰と青々とした小杉谷の森が圧倒的な迫力で迫り、登山目的ででなくとも、ぜひ見ておきたいポイントです。

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祖母山

 大分県の中南部に位置する標高1,756mの祖母山(そぼさん)は、祖母傾国定公園を代表する名峰です。火山活動によって形成された山であるため、巨大な岩石を随所に見ることができます。整備されたものから獣道まで多種多様な登山ルートが存在し、登山者のレベルに合わせて選択することができますが、頂上付近はどの道順を辿っても急な岩登りコースとなっています。祖母山は特別天然記念物のニホンカモシカの生息南限地帯とされているほか、ヤマネやニホンジカの姿を見ることもできます。ミヤマキリシマやリンドウなども数多く自生しており、作家の田中澄江が発表した随筆集「花の百名山」でも紹介されています。
●竹田市神原(こうばる)登山口~山頂/登り3時間50分/下り3時間30分

祖母山

  • 神原から祖母山神原から祖母山

     祖母登山のスタンダードコースは、竹田市の神原(こうばる)が起点となります。神原渓谷沿いの林道の終点に登山口があり、そこから整備された森林帯に入っていきます。
     途中5合目小屋でひと休憩し、ここからスズタケの自生する急坂を登ること1時間40分で、宮崎県側の登山ルートと合流する国観峠(くにみとうげ)に到着します。周囲を灌木に囲まれた広場で、隅には石仏が設置され、ゆっくりと休憩できます。山頂まではあと1.2km。9合目には水場があり、大勢の人が宿泊できる山小屋もあります。

  • 祖母山・傾山縦走祖母山・傾山縦走

     祖母山から古(ふる)祖母山、九折越(つづらごし)を経て傾山(かたむきやま)に至る18kmの稜線は、九州屈指の縦走コースと言われ、登山愛好家の間で人気です。いずれの登山口を選んでも1,000mを越える標高差、祖母山から九折越の小屋までは約9時間、そして山中2泊を要するため、トレーニングを含め入念な準備が必要です。祖母の山々と深い谷を左に見ながら縦走路は延々と続き、3つの岩峰群から成る傾山では、垂直に切り立ったスリリングな岩壁をロープ伝いに歩きます。

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大崩山

 標高1,643mの大崩山(おおくえさん)は、宮崎県延岡市の山深い地にあります。渓谷の美しさは九州の中でも群を抜き、ふもとを流れる祝子川(ほうりがわ)は、川床の深さがわからないほど水が澄み、一帯は広葉樹の森に覆われています。空を見上げれば、天を突くような岩峰があちこちに屹立し、大崩という名称の由来ともなった、崩れたように見える風化した花崗岩が剥き出しになっています。この山系には、100mに及ぶ一枚岩を持つ鉾岳(ほこだけ)、春のアケボノツツジなど、人里を離れあまり人目に触れることのない数多くの魅力があります。
●上祝子登山口~袖のダキ・小積ダキ~大崩山~坊主尾根~上祝子登山口/ 9時間15分

大崩山

  • 祝子川祝子川

     無数の花崗岩の巨石で川床が埋められた祝子川(ほうりがわ)。清流にぬれた岩は赤褐色にきらめき、淵はぞっとするほど青く透き通っています。大崩山への代表的なルートや登山口は、この川沿いに始まり、無人小屋も整備されています。最寄の都市から登山口までのアクセスに時間がかかり、山行が長いことから、ここでの前泊が一般的です。早朝、小屋を出発し、渓谷沿いの登山道を進むと祝子川に出、渡渉して対岸に渡り谷を登っていきます。

  • ワク塚岩峰郡ワク塚岩峰郡

     谷は徐々に急坂に、そして最後は急な崖に変わります。しばらくすると尾根沿いに出、祝子川からも垣間見えた長さ300mに及ぶ岩壁「小積ダキ」が全容を現します。「ダキ」とは地元の言葉で岩壁の意、ここはロッククライミングのメッカになっていて、所々に打ち残されたハーケンがあります。自分が立っている尾根は「袖のダキ」と呼ばれ、おそるおそる岩の端を覗き込むと、足元は数百メートルも切れ落ちています。西に目を向けるとこれから向かう「ワク塚岩峰群」がさらに高くそびえ、絶景のポイントとなっています。山頂までは約2時間かかりますが、特に展望はききません。途中まで往路を戻り、絶壁の悪路を経て祝子川へと下っていきます。

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祖母山の写真(祝子川・ワク塚岩峰群)/写真提供 神田豊徳氏

祖母山の写真(夕景)/写真提供 興田勝幸氏

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