一つの映画が、26年、48作にも連なるシリーズとなったのは、世界でも例のないこと。一人の俳優が演じた世界最長のシリーズとして、ギネスブックにもしっかり登録されている。
日本全国都道府県はちょうど47だから、平均すれば一県一ロケとなる勘定だが、そこはやはり「絵になる」「ドラマになる」ことが最大条件。場所によっては何度もロケに登場したりする。
長崎県は、その一例だろう。一県だけで、6作の『男はつらいよ・純情編』、20作『寅次郎頑張れ!』、35作『寅次郎恋愛塾』、40作『寅次郎サラダ記念日』と、4回も登場している。
中でも五島は印象深い。6作では福江や玉之浦が舞台。名優・森繁久弥と共演する。小さな宿屋の親父役で、寅さんとともに帰ってきた薄幸な娘にポツリポツリと説教しながら、寅さんも指して一言「あン人は、身体の弱かとたいね」。そして35作でも、上五島の港町で老婆の最期に立会った寅さんが、東京から帰ってきたその孫娘・樋口可南子に一目ぼれしてしまう。
港の風景でいえば、20作でも「船で別れ」のシーンが効果的に使われる。とらやに下宿していた青年・中村雅俊が、故郷平戸に帰ると、そこで待つのは独身の姉・藤村志保。後を追ってきた寅さんは、もちろん彼女にポーッと思いを寄せる。
きっと山田監督は、離島とか、港町の持つ独特の哀愁を画面に出したかったのだろう。寝ぐらのない渡り鳥のような寅さんを、やさしく包むのは、寂しさの根っこを知る離島や港の人々だから。
忘れられないのは、五島も平戸も「教会」が効果的なモチーフになっていたこと。とくに20作で、せっかちな神父に扮した桜井センリの姿は、思い出しても笑いがこみ上げる。
長崎空港~(60分・バス)長崎~(100分・ジェットフォイル)福江港
福江港~(110分・ジェットフォイル)長崎港~(20分・バス+30分・西九州新幹線+50分・JR)佐世保~(90分・バス)平戸桟橋
平戸~(90分・バス)佐世保~(80分・JR)諫早~(60分・島原鉄道)雲仙~(120分・バス)長崎空港又は(105分・バス)長崎駅