南九州、宮崎や鹿児島も、寅さんはのんびり旅に訪れる。
45作『寅次郎の青春』でロケ地となったのは、日南の油津。石橋の架かる運河の風景を、カメラは美しく映し出す。石橋を渡るのはマドンナの風吹ジュン。めずらしく、寅さんの方が惚れられる。しかし、それに気づかないのも寅さんらしい。「恋は、男が惚れるもの」と固く美学を持っているからだ。
お隣・鹿児島県は、34作『寅次郎真実一路』で、カツオで有名な枕崎が舞台となった。ふとしたことで意気投合したエリートサラリーマンと寅さん。その彼が蒸発してしまい、寅は美人の奥さんと一緒に南九州を探して歩く。マドンナは大原麗子。人妻だから、寅の思いも複雑だ。
そしてシリーズも40作を超える頃、みんなの関心は「寅さんは、最後はどうなるんだろう」ということだった。噂では、主役の渥美清も体調を崩しているらしい。あの笑顔は、最後にどこへ旅するんだろう。
そしてついに、30年近く演じられた「寅さん」シリーズもラストを迎える。遺作となった48作『寅次郎紅の花』の舞台は、鹿児島県の奄美大島だった。
マドンナは、やはりこの人。浅丘ルリ子の「リリー」である。11作『寅次郎忘れな草』で、ドサ廻りの歌手として登場。その後も15作、25作、そしてこの最終作と4度の共演だ。同じ流れ者同士、肩を寄せ合うのは彼女しかいない。最終作でも、そんな印象を観客に残して終わる。柴又を訪ねたリリーが奄美に帰ろうとするとき、寅さんにこう聞くのだ。
「ねえ、寅さん。どこまで送っていただけるんですか?」
「男が女を送るって場合はな、その女の玄関まで送るってことよ」
宮崎空港~(80分・JR)油津~(50分・JR)串間~(140分・JR)宮崎
宮崎~(190分・バス)鹿児島空港~(60分・航空機)奄美空港~(25分・バス)龍郷町~ (35分・バス)奄美市
奄美空港~(60分・航空機)鹿児島空港~(105分・バス)枕崎~(90分・JR)指宿~(70分・JR)鹿児島~(110分・バス)鹿児島空港