鎖国から開国、西欧の近代技術の導入、発展、日本の近代化へのテンポは奇跡とさえ言われており、西欧には例がない速さであった。殊に九州では石炭産業の力強い背景もあってその発展はめざましいものがあった。日本の基幹産業の重工業の発祥の地とされている。いま、これらの価値ある九州の近代産業遺産群を「世界遺産」登録しようという運動も行われている。 その遺産の地を目で確かめる旅の提案である。 産業遺産を訪ねる旅は、目的のポイントだけでなく、その背景を支える街、街の在り方にも目を向けるゆとりが欲しい。第一巻、第二巻で既に述べているので、ここでは省略したが、北九州市の旧松本邸(西日本工業倶楽部)の文化性、門司港レトロ地区に見る湾岸都市の足跡など、僅か一世紀の間の足蹟に感嘆する。 日経連載の「望郷の道」北方謙三は、当時の遠賀川流域の産炭地の生き生きした人間と街の表情を浮き彫りにしている。五木寛之の「青春の門」もあった。第一巻でとりあげたシュガーロードの中心、佐賀の繁栄も、長崎の「蝶々夫人」や「お菊さん」の物語も、みなこの時代のことだった。 旅は複眼でするのがよい。
北九州空港~(40分・バス)小倉~(16分・JR)八幡~(140分・JR)~唐津
唐津~(80分・JR)佐賀~(85分・JR+31分・西九州新幹線)長崎
長崎~(50分・バス)長崎空港