山頭火は旅に出る。旅から旅へ‥‥。
一所不定の山頭火は九州中を旅(行乞)している。一軒一軒、見知らぬ家の前に立ち、経を念じ、ご喜捨・お米やお金を頂くのである。蛇足だが、今は、全く見られない風景なので「行乞」の意味を知らない人もふえた。
昭和5年9月10日、熊本・八代市の日奈久温泉を出て芦北から、球磨川沿いを五里歩いて人吉市に入った。幾度目かの旅である。
このルートは、当時山頭火が行乞をしながら歩いた南九州を辿る旅である。
「旅のあけくれ、かれに触れて、うつりゆく心の影を、ありのままに写さう、私の生涯の記録として、この行乞記を作る」(9月14日)と人吉で記している。
ところで、彼はそれまでの日記を全部焼き捨てている。「焼き捨てて日記の灰のこれだけか」。と人吉の宿で記している(9月16日)〈前出〉
過去の清算をしなければという思いである。このことからみて、このルートは彼の、第2の生きがえりを目ざした懸命の旅といえる。
●山の水はあふれあふれて
●ありがたや熱い湯のあふるるにまかせ(京町・9月17日)
●ぬれて涼しくはだしであるく(京町・9月17日)
●旅のすすきのいつ穂に出たか(えびの高原)
●霧島は霧にかくれて赤トンボ(高崎新田9月21日)
●あかつきの高千穂は雲かげもなくて(都城9月23日)
●白波おしよせてくる虫の声(青島・9月28日)
●こんなにうまい水があふれてゐる(日南市10月6日)
●飲まずには通れない水がしたたる(志布志10月10日)
●まったく雲がない笠をぬぎ(都農町10月26日)
鹿児島空港~(約70分・パス)人吉市~(約45分·バス)えびの市
えびの市~(約80分・バス)都城市~(約150分・JR)都農町~(約50分・JR)宮崎市
宮崎市~(約90分・JR)日南市~(約20分・JR)南郷町~(約60分・タクシー)志布志市~ (約110分・バス)鹿児烏空港