向い合っている熊本県(阿蘇)と宮崎県(高千穂)に鬼八伝説が残っている。主人公は同一だが物語が微妙に違う。
荒唐無稽さが面白い。従ってスケールが大きい。快力無双、飛ぶように走る。主人(支配者)には服従しようとしない。が、どこか憎めない。
まず、阿蘇の鬼八は健磐龍命(タケイワタツノミコト)の家来。命が往生岳から遥か彼方の的石へ矢を射る。
鬼八はその矢をとってくる役目。100本目を手抜きして足の指でつかんで投げ返した。怒った命は逃げる鬼八を高千穂まで追っかけて殺した。鬼八は命を恨んで阿蘇谷に霜を降らす。
霜には弱い。農作物が出来ないから。命は鬼八の為に霜神社を創り、毎年「火焚き神事」をして鬼八の霊を暖めている。
高千穂に伝わる鬼八伝説は地方一の豪族の親分として語られる。自分で鬼の岩窟の隠れ家を持ち里人を襲う。
最後に鬼八は命に殺される。
高千穂町の高千穂神社と、五ヶ瀬町の三ケ所神社には命と鬼八の彫刻がある。拝殿の角に、高さ一間ほどの命が鬼八を踏みつけている。どちらも同じつくりだ。
熊本(阿蘇)には、そのような造形物は残されていない。
阿蘇の鬼八は、まだ弱小民族、弱かった。それで命の子分だった。宮崎高千穂では、鬼八は強い勢力として対抗している。
一つの勢力が、土地を支配し、服従させていく過程が、この二つの伝説によく現れている。
どちらも、鬼八を大切に祀っている。特に高千穂では、野辺の鬼八の墓も(道路工事に際しても、壊さず移している)。守り続けている。阿蘇と高千穂、向き合っている隣り同士だが、どこか違うことが判るだろう。
それが風土というものだ。地域の風土性、風土の地域性が判りやすい旅だ。
熊本空港~(60分・バス)阿蘇市~(20分・バス)内牧温泉
内牧温泉~(20分・バス)阿蘇駅~(60分・バス)熊本空港~(110分・バス)五ヶ瀬町 ~(20分・バス)高千穂町
高千穂町~(30分・バス)馬見原~(30分・バス)清和~(30分・バス)矢部 ~(100分・バス)熊本桜町バスターミナル(50分・バス)熊本空港