北九州市が門司港地区に集積した「レトロ地区」は産業遺構集積のまちである。
一部、移築修復されたものがあるとはいえ、もともと、その地域全体に点在していた本物を核としている。新しいものといえば海峡ドラマシップぐらいのもの。明治〜大正・昭和初期に門司港で開花した近代建築の粋の集積である。建築学的に貴重な遺構が山ほど。一方で当時、九州の鉄道の基点、発祥の地であっただけに、鉄道産業の遺構も健在である。
門司をふり出しに、九州の鉄道遺構の代表的なものをみてみよう。各地の鉄橋、トンネル、スイッチバックなど。現存する駅舎(折尾、直方など)も多いが、思い切って肥薩線に飛ぼう。別項「日本一の車窓風景」でとりあげたが、ここでは鉄道土木技術遺構の立場で。
「車窓風景」と重複することはない。マニアの間で川線といわれる肥薩線の球磨川沿いの地形を考察に入れた線路の布敷、(当時、現在の海沿い鹿児島本線は、敵国の鉄砲射撃で危ないから、今の肥薩線が九州最初の縦貫線になったいきさつを含めて)は舌を巻く。人吉の石造りの機関庫、続く山線の鉄橋、そして大畑のループ線、遠く山から水を引いた石造りの給水塔、後藤新平、山県伊三郎の墨跡が坐る赤レンガ造りの矢岳トンネルなど全九州のさきがけとしての鉄道建設史がしっかり残る。その裏には明治の気概が溢れる。
ところで、鹿児島への入込客は急増している。「九州新幹線効果」と評する人もいるが、今迄蓄積の底力の結晶だ。街に走る市電は、明治以来の進取の気性と、古いものを大切にする精神の表れだという思いだった。
北九州空港~(40分・バス)小倉
小倉~(約140分・JR)羽犬塚駅~(約40分・バス)大川~(約40分・バス)羽犬塚駅~ (約50分・JR+30分・九州新幹線+40分・バス)人吉駅
人吉市~(約40分・JR)矢岳駅~(約20分・JR)吉松~(36分・JR)嘉例川~ (約10分・タクシー)鹿児島空港