神官型、農民型、大黒天を模したものなど、バラエティに富んだ田の神さぁが点在している。また、「乙房神社の田の神」(文政9年・1826年)や「西高木の田の神」(嘉永4年・1854年)など、江戸時代のものが多いのも特徴。
宮崎が発祥といわれる神官型の田の神さぁの代表格が「新田場の田の神」。「東方の田の神」は僧衣姿の田の神さぁとして知られる。
写真は、宮崎県えびの市中内竪にある享保10年(1725年)の「梅木の田の神」。水田の中の道路に沿って立つ。衣冠束帯風の装束で、背後から見ると円形の台に腰かけた形になっている。神像型の田の神さぁは宮崎県の諸県地方が発祥の地とされ、鹿児島県の菱刈町にかけて分布している。高さ78cm。
えびの市は、市内の田の神さぁの詳しい調査と所在を記した本を編集したり、田の神さぁ踊り大会を実施するなど、田の神さぁを市のシンボルとして大切にしている。末永地区では年一回、田の神さぁのお色直しが行なわれるなど、各地区で田の神さぁにちなんだ行事が行なわれる。また、市の歴史民俗資料館では、学芸員による田の神さぁについての解説が聞けるほか、市役所では田の神ボランティアを登録し、ガイドを行なっている。
「平出水の田の神」は大日如来を彫った珍しい田の神さぁ。小型の田の神さぁが多いのが特徴で、神像と思われる「鳥巣の田の神」(高さ約50cm)が代表作。鮮やかに彩色された「釘野々の田の神」も愛らしい。
写真は、鹿児島県薩摩川内市入来町副田にある宝永8年(1711年)の「中組の田の神」。制作年の分かる田の神の中では2番目に古い像。頭巾を肩から背にかけて覆うように被り、長衣長袴をつけた地蔵姿である。仏像型田の神像の典型例で、県の有形民俗文化財に指定されている。高さ71cm。
薩摩地方の北部には、浮き彫りや半肉彫りにした田の神さぁがよく見られる。「漆の田の神」や農作業姿の「下久徳の田の神」、「畠田の田の神」「高牧の田の神」などに出会える。
「宮内の田の神」は県の有形民俗文化財に指定されている20体の中の一つ。左手に椀を持ち、右足を踏み出して田の神舞を舞おうとしている姿を表している。市内には他に「国分八幡の田の神」(旧隼人町)、「口輪野の田の神」(旧国分市)、「本戸の田の神」(旧国分市)、「森ノ木の田の神」(旧国分市)などがある。