お目出度い席で披露される謡曲「高砂」の主人公は26代阿蘇大宮司の阿蘇友成であることを知る人は少ない。「‥‥九州肥後の国、阿蘇の宮の神主・友成とはわがことなり‥‥」。友成が京へ上るとき立ち寄った播磨の高砂の浦(高砂市)の翁と媼をテーマに世阿弥が物語にした。このことは中世において阿蘇神社、その神官の知名度の大きさのほどが窺える。
あまり知られていない蓮華院誕生寺(熊本県玉名市)のことを。
平成17年4月、ダライ・ラマ法王が訪れた寺として名高い。
5,000人の人が集まって法王の法話を聴き、祈りを捧げた。法王はそれから阿蘇の火口を拝み、阿蘇神社にも詣でられた。
蓮華院誕生寺の開基は古い、建長2年(1250)、この地に生を受けた皇円上人の菩提をとむらうために建立された。
皇円上人とは‥‥法然上人の師、法然上人は浄土真宗の開祖親鸞上人の師である。
三段論法ではないが皇円上人は親鸞上人の師に当る。扶桑略記三十巻を著すなど‥‥名僧であった。ところで蓮華院はかつて八町八反の境内のある大伽藍であった(肥後国史)。
世が戦国時代になり兵火のために伽藍など焼失。当時を物語るもので関白塔と呼ばれる五輪塔2基が九州一の大きさを誇っている。
現在、再建され本院と奥之院があり、どちらにも九州では珍しい五重塔が建っている。
小岱山麓の奥之院には世界一の梵鐘があり、一願成就を願って鐘がつける。座禅も、写経もできる祈りの修行の寺として知られる。