和紙と洋紙の一番の違いは、まず「原料」。和紙はコウゾやミツマタ、ガンピなどの木の皮を利用するが、洋紙は広葉樹や針葉樹などの木材である。
当然違ってくるのはその「繊維の長さ」。広葉樹の繊維の長さが平均0.8~1.8
mm、針葉樹が2~4.5
mmなのに対して、コウゾが6~15
mm、ミツマタが2.9~4.5
mm、ガンピは3.8~4.8
mmというから、コウゾは広葉樹の7~8倍あることになる。繊維が長ければ、薄くても非常に強い紙になるわけだ。
また、和紙漉きにはトロロアオイやノリウツギなどからとった粘り成分の「ネリ」を使う。これが、水切りを遅くして繊維どうしをからませやすくしてくれる。和紙を漉くとき、枠を縦横にゆすっているのは、このネリで繊維を均一に分散させているのである。
702年に日本に伝わった和紙は、重要な記録の書物や経典などに使われていたが、奈良時代には和紙を使った「こより細工」なども生まれ始める。さらに平安時代になると、和紙を綴じ合わせた「紙衣」という着物や、和紙を裁断し、つないで縒りをかけた糸で織る「紙布」、和紙に漆塗りを施した「一閑張り」などの工芸も作られる。紙という平面だけでなく、「塗る」「染める」「張る」「折る」といった作業によって、手箱や器、提灯、水引、蝋芯、玩具などあらゆる立体へ広がっていったのだ。
ほとんどが手作業の「手漉き和紙」。製作の人員や規模にもよるが、その工程にかかる日数はおよそ次の通り。(原料の栽培や採集は除く)
①黒皮(原木から皮をはいだも の)を水に浸す―――1日
②黒皮を取り除く―――1日
③白皮(黒皮を除いたもの)を ソーダ灰で煮る(蒸らし時間 も含む)―――1日
④ソーダ灰を水で洗い流す―― 1日
⑤チリを取り除く―――1日
⑥繊維を叩いて細かくする
――1日
⑦紙に漉く―――1日
⑧紙床で自然に水を切る―― 半日
⑨圧力をかけて水分を取る― 1日
⑩乾燥させる―――半日
合計で、約9日間ということになる。
昔は農作業の合い間の副業として行われることが多かったため、農閑期の冬に紙漉きをする風景がよく見られた。現在は年間を通して行われるが、冬は気候的に紙漉きに適したシーズンともいえる。
●水がきれいで不純物が少ない。
●気温が低いと紙にシミができ にくい。
●繊維どうしがからまりやすい。
●繊維をからませ合う「ネリ」 の効きがよい。