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まさにシュガーロード!佐賀の厳選スイーツ4選

江戸時代、日本の貿易拠点だった長崎からは多くの異国の文化や技術が持ち込まれました。当時、大変貴重だった砂糖もそのひとつ。江戸へ続く長崎街道は別名「シュガーロード」とも呼ばれ、街道沿いだった佐賀は古くから甘美な菓子文化が花開いた地域でした。

長崎街道
豊前小倉から長崎まで続く長崎街道は九州で唯一の脇街道で、街道には25か所もの宿場がありました。鎖国のもと唯一の窓口だった出島に陸揚げされた砂糖は、この街道を通って大坂や京都、そして江戸へ運ばれていたのです。

その途中にある佐賀は比較的砂糖が手に入りやすく、異国の菓子作りの技法も伝わりやすかったのだとか。それまでは砂糖をほとんど使わない和菓子のみだったところに、砂糖をふんだんに使う南蛮菓子の文化が入り込んだことで、ほかにはない独自の菓子文化圏がつくられるようになったのです。

ちょっと余談ですが、いまや日本を代表する菓子メーカーともいえる「江崎グリコ」(江崎利一)や、「森永製菓」(森永太一郎)といった創業者も実は佐賀出身者。国民に広く愛されるお菓子が作れたのも、幼い頃から砂糖や菓子文化に触れていたからかもしれません。

こうした歴史的な背景もあり、佐賀には他のエリアではお目にかかれないユニークで美味しいお菓子がたくさんあります。筆者は佐賀出身ですが、実家時代にはどこに行っても常備されているようなお菓子が、よその県に行くとまったく知られていなかったりする事実に何度も驚かされました。

そんなオリジナリティ溢れる佐賀のスイーツのなかでも、佐賀出身者の目線で選んだぜひ食べて欲しい絶品の菓子をご紹介します。

丸房露(御菓子司 鶴屋)

まずご紹介するのは、佐賀を代表する銘菓「丸房露(まるぼうろ)」。伺ったのは寛永16年(1639年)創業の「御菓子司 鶴屋」。創業370余年を数える、九州でも指折りの老舗和菓子店です。

もともと「ボーロ」とはポルトガル語でケーキを主とする菓子の総称のこと。「ボーロ」といえば、全国的には小さくてサクサクとした豆のような焼き菓子をイメージする方も多いと思いますが、佐賀の「丸房露」は丸くて平べったいコースターのような形で、しっとりとした食感が特徴です。
旧長崎街道のほど近くに店を構える。本店のほか、佐賀駅構内のデイトスにも店舗があります。
佐賀ではほとんどの和洋菓子店で丸房露が作られていますが、そうした丸房露の元祖と伝えられているのが「御菓子司 鶴屋」です。
明治時代には、総理大臣を務め、早稲田大学の創設者としても知られる郷土の偉人・大隈重信候が丸房露をたいへん気に入って、東京の邸宅の一角に職人を招き、竈を築かせ焼かせていたほど。
丸房露をはじめ、「かすていら(カステラ)」やもなかなど幅広いお菓子を作っています。
佐賀城鍋島藩の御菓子司も務めていた由緒ある菓子舗。店内には、佐賀城に菓子を納める際、桶にかぶせていた御用印の蓋が飾られています。
丸房露の材料は、小麦、卵、砂糖、そして蜂蜜といたってシンプル。それだけに材料の選定や作り方でその味わいはがらりと変わってしまいます。
生地づくりを機械に任せる店も多いなか、鶴屋では手で生地の状態を見ながら混ぜ合わせるという昔ながらの製法を守っています。さらに、その日の天気や湿度などもみながら微調整するというこだわりよう。

そうした繊細な作業を重ねて焼き上げた丸房露は、ふんわり、しっとりとした食感で、蜂蜜の甘い香りがたまりません。そして噛むと小麦粉らしい香ばしい風味が楽しめます。
この丸房露、紅茶やコーヒー、お茶などどんな飲み物とでも相性がいいのですが、とくにオススメしたいのが牛乳と一緒に食べること。ミルクがほんのり甘い生地の中にジュワッと染み込んで、食感といい味わいといい、やみつきになる美味しさです。

そうした乳製品との相性の良さに目をつけて、鶴屋では今年から「丸房露のためのアイスクリーム」を発売しました(店舗販売は本店のみ)。原料は佐賀県唐津の「村山牛乳」など県内産の厳選したものばかり。丸房露にのせたり、贅沢にサンドしたりして楽しめます。
御菓子司 鶴屋

佐賀市西魚町1番地

http://www.marubouro.co.jp/

小城羊羹(村岡総本舗)

小城の須賀神社の向かい側に位置する村岡総本舗の本店。威風堂々とした建物からも歴史を感じます。
さて、佐賀には消費量が日本一、二位を争うお菓子があります。
それが羊羹。
なかでも小城市は、5万人にも満たない人口にも関わらず20数軒の羊羹店が集まる“羊羹王国"です。佐賀ではほとんどの家庭で羊羹がひと棹、ふた棹常備されていて、お茶請けの定番として親しまれています。
「村岡総本舗」は小城羊羹の始祖ともいわれ、「小城羊羹」の名付け親でもあります。
ここがユニークなのは、本店の建物の横に砂糖倉庫を改装した「羊羹資料館」が併設されているところ。資料館(無料)では、羊羹製造方法をはじめ、昔ながらの道具や材料、昭和期のレトロな包装紙など貴重な資料が展示されています。
羊羹資料館の建物は有形登録文化財にも指定されています。
鉄道網の発展とともに需要が広がっていった小城羊羹。
写真は列車販売時に実際に使われていた羊羹を運ぶオカモチです。1棹50円という価格設定からも時代を感じます。
嬉しいことに、資料館を見学した人には羊羹と抹茶のサービスを行っています。
羊羹の歴史や製造工程を知ったうえで食べる甘味は、また格別です。

このとき提供される羊羹は「櫻羊羹」と呼ばれる村岡総本舗を代表する商品で、櫻の名所・小城にちなんだ薄紅色。断面の四隅が向こう側の光を通してわずかに半透明にみえるのが小城羊羹の特徴でもあります。
小城羊羹の伝統製法である「切り羊羹」は、本来はやわらかく、しっとりとした食感ですが、日が経つと空気に触れた表面の糖分が固まり、シャリシャリとした氷砂糖のような食感に変わります。
個人的には、この外はシャリ、中はしっとりとした状態の方が「小城羊羹を食べているなー」と実感が湧いてきて好きですね。

村岡総本舗は2015年、イタリア・ミラノで行われた万国博覧会の日本館にて、「本場の本物」メンバーの一員として、福岡の名店「珈琲美美」のコーヒーとともに羊羹を提供したそうです。ミラノっ子も虜にした羊羹をぜひ味わってみてください。
店を代表する本煉(ほんねり・左)と紅煉。ともに800円。昔の包装の意匠をモチーフにしたレトロモダンなパッケージも素敵です。
村岡総本舗

小城市小城町861

http://muraoka-sohonpo.co.jp/

さが錦(村岡屋)

個装タイプ(5個入り700円)と棹タイプ(756円)の2種類があります。「さが錦」の文字は、福岡の著名デザイナー・故西島伊三雄氏の手によるもの。
和菓子の文化と洋菓子の文化が混じり合った佐賀らしい、和洋折衷のお菓子が「さが錦」です。
生み出したのは村岡屋。昭和3年に上で紹介した小城羊羹の村岡総本舗から暖簾分けをして、独立経営をはじめました。

もともと佐賀錦とは、肥前鹿島藩大名・鍋島家に伝わる伝統織物で、金銀箔や多彩な絹糸を使った精緻で贅沢な絹織物。それをお菓子で表現するために、完成までに4年もの歳月がかかったそうです。

さが錦の真ん中は、山芋を練りこんだ生地に小豆や栗をたっぷりと入れた「浮島」と呼ばれる“準和菓子"。その両側を薄いバウムクーヘンで挟んでいます。
その和菓子と洋菓子を繋げる接着の役割を果たすのがチョコレートです。二人の職人が息を合わせて一気に貼りあわせるなど、製造の多くの工程で職人の技が光っています。
ほっとする和菓子のような、華やかな洋菓子のような、ほかにはない味わい。洋酒の香りがほのかに漂い、コーヒーや紅茶とも相性抜群です。
佐賀市の目抜き通りに店を構える村岡屋本店。
「鍋島さま」や「徐福さん」など、佐賀にちなんだ和洋菓子もたくさん。イートインができるスペースもあります。
村岡屋

佐賀市駅南本町3−18

http://muraokaya.co.jp/shoplist/honten/index.html

ブラックモンブラン(竹下製菓)

最後に、お菓子ではないのですが佐賀の人たちが愛して止まない、ソウルフードならぬ“ソウルアイス"をご紹介します。

その名も「ブラックモンブラン」。

移り変わりの激しいアイス業界にあって、誕生から48年も愛され続けているロングセラーアイスです。ブラックモンブランは佐賀&九州のコンビニ・スーパーではほとんどの店で扱っている超定番アイスですが、関東や関西ではごく限られたところでしか販売しておらず、お目にかかれるのはとても稀。ですので、そうした意味でも九州を訪れたらぜひとも食してもらいたい逸品なのです。

竹下製菓の前会長が、ヨーロッパアルプスの最高峰・モンブランを見て「この真っ白い山にチョコレートをかけて食べたらさぞ美味しいだろう」と考えたことから生まれたそう。
竹下製菓は小城市に本社を構えるアイスクリームメーカー。
地元のスーパーのアイス売り場には、竹下製菓コーナーを設けているところも。ブラックモンブラン以外にも、「ミルクック」や「がんばれ!!トラキチ君」も必食の美味しさです!
スタンダードなブラックモンブラン(100円)以外にも、スペシャルブラックモンブラン(130円)やビターチョコモンブラン(130円)などもあります。ぜひ探してみてください。
バニラアイスをチョコレートとザクザクとした食感のクランチでコーティングしてあります。このクランチが曲者で、これをいかにこぼさないようにして食べるかが腕の見せ所ですね。

シュガーロード沿いに誕生した、創意工夫を凝らしたお菓子やアイス。
ほかにはない美味しさで、手土産としても喜ばれること間違いなしですよ。

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