佐伯の漁師が愛した保存食「ごまだし」それは現代の万能調味料だった
大分
更新日:2018年02月07日
大分県佐伯市には、漁師家庭を中心に受け継がれてきた「ごまだし」と呼ばれる郷土料理があります。
使用する食材は「焼き魚・醤油・ゴマ・みりん」のみ。なのに深いコクと味わい。
お湯を注ぐだけで、美味しい出汁へと変わる魔法。
「ごまだし」と、ごまだしを使用した料理を紹介します。
大分県佐伯市とは
リアス式海岸の続く海岸
まずは基礎知識から。佐伯は「さいき」と読みます。市町村合併により人口約73,000人(2018年1月末現在)で、面積は九州でも一番大きい900k㎡。市内の端から端まで、車で3時間かかるという広さです。
佐伯市鶴見地区「漁村女性グループめばる」
大分自動車道、佐伯堅田I.C.をおりて20分。604号線を進むと海が開けます。漁船場をいくつか通り抜けながら、さらに進むと「漁村女性グループめばる」の看板が見えてきます。平均年齢60代後半!の元気なおばさま方6名が、瓶のパッケージングや、厨房作業をしているところでした。「漁村女性グループめばる」代表の桑原政子さんにお話をききました。
漁村女性グループめばる(ぎょそんじょせいぐるーぷめばる)
大分県佐伯市鶴見大字沖松浦1395-4
https://www.facebook.com/gomadasi/
「ごまだし」とは
「ごまだし」は「もったいない」と「手間いらず」を併せ持つ
そもそも「ごまだし」とは、佐伯の漁師家庭に受け継がれる郷土料理。桑原さんは、「ごまだし」の起源は正確にはわからないが、代々受け継がれるには2つの理由があるのではないか、とおっしゃいます。この地域は、巻き網漁が専門。競りに間に合わないと換金されず、せっかく獲った魚がもったいない、そこで、その魚が新鮮なうちに焼いて「ごまだし」を作ったという理由。
もう一つは、忙しい漁師の嫁が、出汁をとったり、味付をする手間がなく「ごまだし」をのせることで味わいが出るので、これは便利だということが一つ。
「ごまだし」の作り方
[材料]
焼いた魚・・・500g(この日はアジ10匹くらい)
薄口醤油・・・180cc
濃口醤油・・・180cc
みりん・・・100cc
すりゴマ・・・200g
1.焼き魚(この日は、アジ)を素焼きし、大きな骨は取り除き、身をほぐしてすり鉢に入れます。
2.すりこぎで擦りながら、目に入る2,3cmの骨を、ざっと、つまみ出します。
3.ざっと、擦り潰したら、醤油を入れて混ぜ、みりんを入れて混ぜ、すりゴマを入れて混ぜて、完成!
最初にゴマをすり鉢で擦って、それから焼いた魚を入れると、すり鉢1個で完成します。
「骨を取ったり、つまみ出したりする作業が面倒でしょうが、面倒なんは全部おばちゃんらが引き受けるけん、若い人たちゃ、ごまだし食べて、魚で栄養つけなさい!」と桑原さん。
常温・冷蔵保存がきくのもいいですね。(使い切る目安は1ヶ月)
佐伯名物「ごまだしうどん」
のっけるだけ!これが佐伯名物「ごまだしうどん」
冷凍庫にあった、という冷凍うどん麺とかまぼこを、沸騰したお湯にいれて、器に入れます。
ネギを刻んでのせて、「ごまだし」をのせ、麺をゆがいたお湯をぶっかける。「ごまだしうどん」完成!
「いただきます!」
上にのった「ごまだし」をお湯でほぐしながら、まずは汁をズズツ。魚の旨味とごまの香りが出汁になり深いコクが出ています。これがお湯をかけただけ、とは不思議です。あっという間に完食しました。味が足らないなと思ったら「ごまだし」を加えて調整できるのもいいですね。
佐伯市内では、10店舗以上でとっても美味しい「ごまだしうどん」を提供してます。詳しくは、下記サイトをご覧ください。
つけ麺、冷奴、グラタンやスイーツにも
ごまだしは現代の万能調味料で、つけ麺、冷奴、グラタンやスイーツなどどんな料理にも相性抜群です。
「漁村女性グループめばる」を結成して13年。桑原さんは、自分だけでは説明できない「ごまだし」の様々な活用方法があることを、もっと多くの方に知ってもらいたいという想いがありました。色々なご縁が重なって、2014年9月に「佐伯ごまだしレシピ」を刊行しました。桑原さんの長女、寿(すが)さんは大分市内で料理教室を開いています。寿さんのアイディアも相まって、バーニャカウダやキッシュなど、従来の漁師料理に加えて、新しい発想のレシピも多数掲載されています。
パンにも合います
新商品「パン de ごまだし」
「最近の子は、パン食だから魚を食べない。」そんな声を耳にした桑原さん。そこで考え付いたのが、パンにつけるごまだし「パン de ごまだし」。ごまだしに豆乳やオリーブオイルを加え、パンに合うように味を整えていったそうです。ごまだしを洋風にして、まろやかにしたお味でした。ハード系のパンにつけても、食パンにつけても、よく合います。
めばるの「ごまだし」は、蓋を覆う紙の色で使用している魚の種類が変わります。赤は「鯛」、ベージュは「えそ」、茶色は「あじ」。それぞれ、上品・あっさり・コクあり、と特徴があります。ご家庭で作る「ごまだし」も魚を変えてみても楽しいですね。
桑原さんは、おばあさんが「ごまだし」を作っているのを、幼少時よりそばで見ていたと言います。それぞれの家庭で作った「ごまだし」には敵わない、と言います。そんなオリジナル「ごまだし」を作って、食卓のレパートリーを増やしてみませんか。
「ごまだし」の買える店
もちろん、お土産としても販売されていますよ。お店によって特徴が違うので、食べ比べてみるのもいいかもしれません。
以下のサイトをご覧ください。
佐伯ごまだし暖簾会
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