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秋にしかできない、有田陶磁器まつりと波佐見焼の楽しみ方【前編】

有田の町並みを舞台にGW期間に行われている有田陶器市(毎年4月29日〜5月5日開催)。例年、約100万人が訪れる陶磁器の一大イベントですが、実は、秋にも「有田陶磁器まつり」なる陶磁器イベントが開催されています。
規模こそ春には負けますが、実は秋ならではの魅力もたくさん。今回はその「秋の有田陶磁器まつり」と、有田のお隣、波佐見焼&波佐見の街の魅力をお伝えします。

やきものも風情も楽しむなら、秋が一番!

さて、「秋の陶磁器まつり」ならではの魅力を順を追ってご紹介していきたいと思います。
まず1つめ。
春の有田陶器市はGW開催ということもあって、九州一円はもちろん、全国から器好きが集まってきます。その熱気、密度たるや相当なものです。
でも、「秋の陶磁器まつり」はご覧のようにゆっくり、のんびりした雰囲気。お店の人との会話を楽しみながら、ゆっくり器を吟味することができます。
 

有田は紅葉の名所

2つめ。
秋ならではの景色といえば紅葉。
黒髪山をはじめ、険しい山に囲まれた有田は、紅葉の名所でもあります。
写真は有田町のシンボルともいえる、泉山弁財天の大公孫樹(おおいちょう)。樹齢1000年、高さ40mにもなる国の天然記念物で、おそらく日本一のイチョウともいわれています。その秋の姿は鮮やかに輝く黄金色の巨大な球体のようで、きっと誰もが圧倒されるはずです。足元は一面、黄色い絨毯が敷かれています。
期間中はライトアップも行なっていて、夜の姿もまた幻想的です。
日本磁器発祥の地として知られる泉山磁石場。1616年に朝鮮人陶工・李参平により陶石が発見されて、日本で初めての陶磁器が誕生しました。
泉山磁石場近くの山林も紅葉スポットで、もみじのトンネルが散策できます。
そして3つめは、有田町内それぞれの商店会がおこなう、趣向を凝らしたおもてなしです。
登り窯用の耐火レンガ(トンバイ)などを赤土で固めて作った、トンバイ塀のある裏通りでは、野外カフェを開催。ほかにも窯元の器に料理を盛り付けた陶彩弁当を販売したり、スタンプラリーを行ったりと楽しく町歩きができる工夫が散りばめられています。
 

源右衛門窯

4つめは〝炎の響演〟と題された「薪窯めぐり」です。
「今右衛門窯」、「柿右衛門窯」、「源右衛門窯」、「谷窯(登り窯)深川製磁」、そして有田ポーセリンパークの「天狗谷窯」という有田を代表する名だたる窯元で、貴重な薪窯焚きの公開があるのです。
これは秋の陶器まつりならではの企画。
こちらは、創業260余年の「源右衛門窯」。
長い煙突から薪窯焚きのモウモウとした煙が吐き出されています。
 
源右衛門の本窯は明治のはじめにヨーロッパから導入された両面焚き口式窯という構造のもの。窯の両側に計4ヶ所の焚き口があり、2人1組で呼吸をあわせて薪をくべていきます。
奥の長屋では、ろくろや絵付けの工程を間近で見ることができます。
集中力を要する緻密な作業に、見ているこちらまで息がつまりそうです。
古伊万里様式に独自の現代的アレンジを施した、源右衛門窯の器。コレクターも多い人気の品々も陶磁器まつり期間中はグッとお得になっていました。
 

有田のちゃわん祭りと2016/(ニーゼロイチロクプロジェクト)

有田焼商社22社が集まる「有田陶磁の里プラザ(有田焼卸団地)」は、有田焼専門の大規模ショッピングモール。
ここでも陶磁器まつりと同時期に「有田のちゃわん祭り」が行われています。各店で器をお得な価格で販売するほか、ステージイベントやグルメイベントなども行なっていて、家族連れでも楽しめます。
なかでもいま注目される窯元が、「2016/」です。
「2016/」は世界各国、16組の気鋭デザイナーとタッグを組み、現代的かつ日常に寄り添う、新しいスタンダードとなりうる器づくりを目指しているブランドです。
 
店内に入ると、いきなりスタイリッシュなコーヒースタンドが設けられています。コーヒーは一杯ずつ丁寧にドリップしています。
「2016/」のマグカップでいただくドリップコーヒー(500円)。マグカップは前衛的なデザインですが、口当たりがとても良く、びっくりしました。もちろん、生チョコレートとの相性も抜群です。
店内奥の展示・販売スペースもまたおしゃれです。
柳原照弘氏とショルテン&バーイングス氏が手がける「エディション」と、15組のデザイナーが手がける「スタンダード」、2つのシリーズがあります。
カフェで使用されていて気になったマグカップは、藤城成貴氏のデザイン。有田では上絵付けのことを赤絵と呼んでいて、昔から特別な色だったその赤に着目してデザイン。赤は3600円、グレーは3100円です。
2016/

佐賀県西松浦郡有田町赤坂 有田焼卸団地

http://www.2016arita.com/jp/arita/about-the-project

有田×サンタプロジェクト

陶磁器まつりとも重なる11月上旬から12月25日まで、有田ではちょっとユニークな光景が見られます。
それは、有田町でも山あいに位置する黒牟田・応法地区で行われる「有田×サンタプロジェクト」。
有田でも歴史深い窯元が連なる地区の煙突に、サンタがやってくるのです。窯元ごとにサンタの姿は違っていて、高い煙突にいざ飛び込もうとするサンタもいれば、窓に必死にしがみついているサンタもいて、どの姿もユーモラス。
 
どのサンタも臨場感たっぷり。たくさんプレゼントの入った袋をかついで上に登る「よいしょ、こらしょ」というかけ声が聞こえてきそう。
なぜこんなプロジェクトが毎年展開されているかと言いますと、有田の窯元の子供達は親から「ウチに来るサンタは窯の煙突からプレゼントばもってこらすとぞ!」と言われて育ったという話から、「じゃあ本当に煙突にサンタを登らせたら面白いんじゃない?」と盛り上がったことがきっかけだそうです。煙突を日常に見て育つ有田ならではのイベントですね。
 

木漏れ陽

そして最後に、とっておきの隠れ家カフェをご紹介します。
有田町の中心地から車で約15分。神秘的な渓谷美で有名な「竜門峡」にある「木漏れ陽」です。(実は木漏れ陽の煙突にもちゃっかりとサンタがいます。わかりますか?)
 
店は渓流沿いに建っていて、天井まで窓を設けているので開放感抜群。しかもどの席でも景色が正面に見えるように、3層からなるカウンター席だけの劇場型です。春は川沿いの桜が見事です。

 
コーヒーや紅茶は、ショーケースのなかから好みのカップを選ぶこともできます。なかには、井上萬二氏など人間国宝による器もあります。
景色のほかにも味わって欲しいのが、美しいラテアート。
マスターの高橋伸児さんは、ラテアートの九州大会で優勝経験もあるラテアーティスト。カフェ・ラッテ(800円)を頼むと、有田の百田陶苑に特注したオリジナルのカップに美しいスワンを描いてくれました。コーヒー豆はそれぞれの個性を生かした自家焙煎。自家製のスコーン(2個180円)もおすすめですよ。
木漏れ陽

佐賀県西松浦郡有田町広瀬山甲2373−4

http://www.ryusenso.jp/komorebi/

いかがでしたか? 有田ならではの風情を楽しむなら秋がベストシーズンかもしれません。
もちろん、器好きなら見逃せない「有田陶器市」は例年4月29日〜5月5日に開催されます。こちらも是非訪れてみてください。
さて、後編では2つの街を結ぶ「有田波佐見乗合TAXI」に乗って、お隣の長崎県波佐見町を散策してみようと思います。
後編はこちらから
 

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