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山の中に海軍の町!?「錦町立人吉海軍航空基地資料館」こと「ひみつ基地 ミュージアム」へ

2018年8月1日にオープンして以来、太平洋戦争中の日本海軍の様子を知る場として注目を浴びている「ひみつ基地ミュージアム」。この地に残る地下軍事施設の数々は、九州に残る戦跡の中でも最大級の規模のものです。実際の遺構を見て触れて、歴史を体感する旅のご案内です。

資料館にはゼロ戦の破片や隊員の遺品、戦時中の証言ビデオなどが

施設外観
熊本県球磨郡錦町の田園風景の中に佇む「ひみつ基地ミュージアム」は、太平洋戦争末期に造られた人吉海軍航空基地の歴史を学べるオープンミュージアムです。施設内は資料館になっており、太平洋戦争と航空基地の歴史年表や航空隊員の遺品、錦町の山中で見つかったゼロ戦の破片などが展示されています。
太平洋戦争の歴史や基地の全容を詳しく解説
1945(昭和20)年6月14日、旧西村の山中に墜落したゼロ戦。米軍11機に単機で挑んだ末の墜落でした

また、戦争当時、錦町で人吉海軍航空基地の設営に携わった人や、軍人秘書をしていた女性、2度の空襲を経験した由留木集落の方など、当時を知る人の証言ビデオが用意されており、戦争体験者の生の声を知ることができます。

戦争末期、山の中にひっそりと建てられた海軍のひみつ基地とは!?

かつての滑走路跡の横に伸びる道路

人吉海軍航空基地は、1943(昭和18)年に基地建設が始まりました。長さ1,500メートル、幅50メートルのコンクリート滑走路を備えた本格的な飛行場で、翌年からはパイロットやエンジニアを育成する教育基地として使われ、約6,000人もの予科練生たちがこの地で学びました。
その後、激化する戦局を反映するかのように、空襲を受けても戦闘や生産を継続できるように、地下に数多くの軍事施設が掘り進められました。この地下軍事施設のうち、「魚雷調整場」や、「地下作戦室・無線室」「地下兵舎壕」などは、現在「ひみつ基地ミュージアム」のガイドツアーで回ることができます。
地下軍事施設の全容は地元の人にも知らされておらず、まさに“ひみつ基地"だったことともあり、長い間単なる防空壕だと思われていました。しかし、2015年に地元の有志による調査・研究によって、実はさまざまな軍事目的を持った地下施設であったことが明らかになり、その後調査・研究・整備が進められました。終戦後70年もの時を経て歴史の謎が明らかになったのです。そして錦町から隣の相良村にかけて、50以上の地下軍事施設が現存しています。

過酷な環境で爆発物を扱っていたことに驚く魚雷調整場ガイドツアー

魚雷調整場入り口。戦時中これらの地下施設の入り口は、土嚢を積み上げ、木の枝を刺して、外からはわからないようにカモフラージュされていたそう

「ひみつ基地ミュージアム」でぜひ体験していただきたいのが、地下軍事施設を回るガイドツアーです。ツアーでは「魚雷調整場」「地下兵舎壕」「地下作戦室・無線室」など、現存する地下軍事施設の遺構に入って見学ができます。
いずれの地下施設も、当時の設備等が残っているわけではないため、一見するとどれも真っ暗で大きな洞窟ですが、ガイドさんの案内で歴史的背景や、施設の使われ方を聞きながら回ることで、当時の様子を臨場感たっぷりに思い浮かべることができるのです。
「魚雷調整場ガイドツアー」は入館料800円の中に含まれているので、ぜひ逃さず体験してください。所要時間は40分ほど。ガイドさんと一緒にミュージアムを出て、魚雷調整場まで坂を下りて移動します。歩きやすく、汚れてもいい靴で訪れてください。

魚雷調整場の中。爆発物を扱っていたエリアの天井、床はコンクリートで補強してあります

地下魚雷調整場は縦横に入り組んだ構造をしており、これは万が一魚雷が誤爆した時に近くが延爆しないように、設計されているとのこと。

実物大模型「九一式魚雷(きゅういちしきぎょらい)」の展示も

真っ暗な上に、夏は暑く冬は寒い地下施設。この過酷な環境で、誤爆の可能性もある魚雷調整という繊細な作業をしていたことに驚きを覚えます。

「地下作戦室・無線室」「地下兵舎壕」はオプションガイドで

地下兵舎壕(ちかへいしゃごう)入り口。この中で年若い予科練生たちが暮らしていました

「地下兵舎壕」「地下作戦室・無線室」はオプションガイドで、500円(小学生400円、未就学児200円)で参加できます。事前予約も可能ですので、興味のある方はあらかじめ申し込んでおきましょう。

「地下作戦室・無線室」は終戦間近に造られたため、天井も低く、どこか粗削りな印象です。

ガイドさんによると、戦争中「地下兵舎壕」には二段ベッドが置かれ、多くの予科練生たちが寝起きしていたそうです。直線で約80メートルの暗い横穴を奥に進みながら、ここで暮らしていた10代の少年たちに思いを馳せることで、過酷な暮らしを肌で感じ、改めて戦争、平和について考えるきっかけになるかもしれません。

ニューオープンの新館では、赤とんぼに注目!

実物大模型は前、横、上とさまざまな角度から見ることができます

2021年3月1日には新館がグランドオープンしました。新館には当時の予科練生が整備や飛行の練習に使っていた「九三型中間練習機(通称赤とんぼ)」の実物大模型が展示されています。

地域の特産品・土産物販売スペースや、イートインスペースも(※新型コロナウイルスの影響のため、イートインスペース開始日は現在のところ未定)
「人吉海軍キーマカレー」はひみつ基地ミュージアムのオリジナル商品。熊本ゆかりの馬肉を使い、材料は熊本県内産で揃えました

一日かけてじっくり見て過ごしたいミュージアムです。「ひみつ基地」の名前に心惹かれた子ども連れの家族も多いのだとか。ミュージアム内は木造建築の温かみを感じられ、誰もが気軽に訪問しやすい雰囲気です。こういったミュージアムを身近に感じ、気軽に訪問することが、歴史を知る第一歩かもしれません。

「錦町立人吉海軍航空基地資料館」~山の中の海軍の町にしき ひみつ基地ミュージアム~

熊本県球磨郡錦町木上西2-107

https://132base.jp

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