九州でよく見かける小鹿田焼のお皿。面白い幾何学模様が特徴でシンプルなデザインですが、色々な料理を引き立ててくれるのでとても重宝します。
手にすると手作りならではの風合いや温かみが感じられ、とても身近な器なのですが、九州の人間でも小鹿田焼について知らないことが多いことに気がつきました。
知りたい!調べてみたい!という思いにかられ、大分県日田市にある小鹿田焼の里に行ってみることにしました。
約300年前に大分県日田市の山奥で小鹿田焼の歴史は始まりました。「小鹿田」は「おんた」と発音しますが、昔はここの土地が狭く荒地が多いことから「鬼」の字が用いられ「鬼カ田」「鬼ガ田」と表記されました。また鹿の生息地でもあることから「鬼鹿田」となりさらに「小鹿田」と変化していったと言われています。
ここ小鹿田の皿山地区は、明治以降に農業ができない時期に窯業を扱う半農半陶(はんのうはんとう)で生活をしていましたが、昭和50年(1975)にはすべての窯元が専業化しました。現在の窯元は開窯時からの流れをくんだ9軒のみで、小鹿田焼の技術の伝承は、親から子へと受け継がれる「一子相伝(いっしそうでん)」の伝統を守っています。民藝運動(みんげいうんどう)の創設者、柳宗悦(やなぎむねよし)との出会いや昭和29年(1954)には世界的な陶芸家であるバーナード・リーチが3週間にわたり滞在し陶芸技術や心構えを職人へ伝授したことで民陶ブームとなり、小鹿田焼の魅力が世界中に広まるようになりました。
小鹿田焼は、近くにある山の土を原料にすぐそばを流れる川の力を借りて、機械を使うことなくすべての工程を手作業のみで行っていきます。山の土を川の流れを動力にした唐臼で20~30日かけて細かくしていきますが、平成8年(1996)には、川のせせらぎと独特な音が響き渡る唐臼の音が「残したい日本の音風景100選」に選ばれました。
ちょうど訪れた日が年に数回しか行われない貴重な火入れ作業日で、その作業を拝見することができました。
小袋さんの家には共同窯ではなく専用窯が家の敷地内にありました。小鹿田焼は登り窯を使用するのですが、最下部の焚口から順次炊き上げていきます。1番目の袋が約1250度に到達後、2番目から最後の袋まで焚き上げます。一度炊き上げを始めたら途中でやめることができないので、息子さんと交代で24時間体制で10分おきに薪を入れ火の調整をしているそうです。薪を入れていく作業では、温度が上がるともう1本というように薪の燃え具合や気候の変化を感じながら行い窯の温度を上げていきます。
「薪の大きさも1つ1つ違うので言っても分からないので体験して覚えていくしかないのです」とおっしゃる小袋さん。
「窯には奥と手前とあり、この2つの温度のバランスをとるのが難しいのです。奥の温度が先に上がると、全部そちらに炎が行くので手前の温度が上がらなくなるのです」
「2017年7月の九州北部豪雨の際は大量の土砂が流れ込み大変でした。他にも山から水がこなくなったりと自然の恵みを受けて作っていますから仕方がないです」とおっしゃる小袋さん。
長く続いてきた歴史と機械を使わず手作りの伝統を守り続ける道を選んだ9件の窯元の皆さん。そこにには沢山の苦労もあったと思われます。今では以前と変わらず小鹿田焼の製作が行われていますが、このコロナ禍の中で毎年行われていた「小鹿田焼唐臼祭(5/3~5/5)」や「小鹿田焼民陶祭(10月第2土・日)」が昨年は中止され今年もどうなるかは分からないとのことでした。毎年多くの陶芸ファンを魅了しているお祭りだけに、一日も早く楽しいイベントが開催されるとよいですね。もちろん個別には訪れることができますので、小鹿田焼の伝統的な技法が守り伝えられているこの皿山地区に遊びに行って、窯元の方々の作られた作品を見たりお話を聞いてみてはいかがでしょうか。また皿山・池ノ鶴地区を含む「小鹿田焼の里」の景観は国の重要文化的景観にも選定されていますので里の風情も楽しみです。
そして小鹿田焼の保存と伝承を目的とし平成24年に全面的に生まれ変わった小鹿田焼陶芸館では、より詳しく小鹿田焼の手法や作品を知っていただくことができますので、こちらにもぜひお立ち寄りを。小鹿田焼の里で、小鹿田焼の素晴らしさをぜひ体感してみてください。
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