【ワイン】地元の人と風土で育む「都農ワイナリー」宮崎県都農町

欧米諸国に比べるとまだ歴史の浅い日本産ワイン。

しかし、最近ではその品質や豊かな味わいに世界から注目を集めています。

現在、九州にもいくつかのワイナリーがあります。

その中で今回は、宮崎県都農(つの)町にある「都農ワイナリー」についてご紹介します。

 

 

 

そもそもなぜ宮崎県都農町で、国内外での評価が高く、多数の受賞歴を持つ都農ワインが生まれたのか?

まずはその歴史から紐解いていきたいと、「都農ワイン」の社長である小畑暁(おばたさとる)さんにお話をうかがいました。


小畑暁(おばたさとる)さん
都農ワイン 代表取締役社長 小畑暁さん

(プロフィール)

小畑 暁(おばたさとる)

株式会社都農ワイン 代表取締役社長。北海道出身。

ブラジルにて日系企業のワイン醸造責任者を経て、都農ワインの工場長となる。

 

 

 

もともと都農町は梨の栽培が主でしたが、台風の被害を大きく受ける梨に代わって、戦後まもなくぶどうの栽培が始まりました。しかし、シーズンを過ぎるとぶどうが売れなくなり、その対策として1980年代にワイナリー構想が生まれました。そこから実際にワイン作りが始まったのが1996年。今年で22年になります。

始まりは決してポジティブなものではなく、試行錯誤の末に始まったのが都農ワインの始まりなのです。

 

都農ワインは地元産100%。とことん地元のぶどうにこだわったワインです。ワイン専用ではない都農町のぶどうを年間24万本出荷するまでにいたったのは、「土作り」と「醸造」へのこだわりです。


「土作り」と「醸造」へのこだわり

ぶどう畑
ぶどう畑
1.土を考える

都農の土質は、火山灰土壌の「黒ボク土」です。この土は排水性には優れているものの、ぶどうが必要とするカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が乏しい土壌です。都農ワイナリーの牧内農園では、地元の農家さんたちに習い、堆肥を使った土づくりを行なっています。積極的に堆肥を利用して顆粒状の土をつくり、ぶどうの根が張りやすい環境を整えます。そうしてようやく健全なぶどうの樹と果実を作ることができます。


2.栽培品種を考える

宮崎平野を一望する標高150mの高台・牧内台地に、「都農ワイナリー」はあります。広々とした敷地の一画および敷地周辺には、牧内農業生産組合が運営する専属農園があり、現在4.5haほどの畑で白ワイン用シャルドネ、ソービニヨン・ブラン、赤ワイン用シラー、ピノ・ノワール、マスカットベリーA、テンプラニーリョ、メルローを栽培しています。


3.栽培方式を考える

これまでの栽培技術をもとに新たなる挑戦も行なっています。農薬や化学肥料に頼らない作物づくり。それは、土とともに生きる「都農ワイナリー」の理想です。


醸造法を考える

ワイン樽
大切に保管されるワイン樽の数々

ワイナリーの丘にあるぶどう畑に囲まれた都農ワインの工場。ここでは、10月に新酒の赤とロゼが発売されるのを皮きりに、翌年2月には、自社農園栽培のぶどうを醸造した赤のエステートとアイスワイン、3月にはタンク熟成の白、4月末から5月にかけて樽熟成させた白がリリースされます。

ワイナリーが一番活気づくのは収穫の時。その日が近づくと、毎日畑ごとにぶどうの糖度を調べ、天気予報をチェックしてタイミングをはかります。ぶどうの熟し具合がピークに達した日に、朝日が昇らないうちからスタッフ総出で一斉に収穫を始めます。

 

 

大切に手で摘み取ったぶどうは、そのまま工場へ。

その日のうちに仕込みに取り掛かります。

赤はまず除梗破砕してから酵母を加えて醸し発酵させます。

白とロゼは搾汁機にかけて皮や種を除いて、圧搾後に酵母を加え、果汁だけを低温発酵させます。

そして、澱引きしてタンクや樽で熟成後に精密濾過をして瓶詰めするというのが、スタンダードな工程です。


表現法を考える

ワインを注ぐスタッフ
希少な赤のスパークリングワイン「レッド」

赤ワインには仕込みのパターンによって、色と味、香りのバランスをさまざまに表現することができます。

都農ワインの新酒「マスカット・ベリーA」は、尾鈴ぶどうを使った軽くてフルーティーなワインです。タンニンを引き出さず、色と旨み成分を抽出するために、発酵前に低温で果実を漬け込むのが特徴。鮮やかな色とフレッシュな香りを楽しめます。

一方「エステート」は、自社農園で栽培したマスカット・ベリーAを使った豊かな果実味と凝縮味が感じられるワイン。醸し発酵を長めにし、色やタンニンを十分に抽出。9月に仕込んで10月までタンク発酵、11月から冷却処理をして翌年2月、タンニンがまるく感じられる頃にリリースされます。

そして、国内でも希少な赤のスパークリングワイン「レッド」。樽熟成したマスカット・ベリーAを主体に、自社農園で育成した専用種カベルネ・ソービニオンとシラーをブレンドして作っています。赤ワイン特有の渋みと弾けるような炭酸の刺激。暑い夏には冷やして美味しく飲むことができます。

 

 

最新の機械を使用する一面もあれば、どこまでもアナログな職人技もふんだんに盛り込まれています。最後のラベル貼りは手作業で行うというところも、「都農ワイナリー」ならではの心意気を感じます。


タンク発酵
タンク発酵
ラベル貼り
手作業でラベル貼り

「都農ワイナリー」の夢はまだまだ続きます。

ワインは美味しい料理に寄り添い、人と交わりながら味わうことで、その豊かさは何倍にも膨れ上がります。

ワイン作りも同じこと。地元の人や風土とふれあい大きく進化を遂げる都農ワイン。小畑社長の次の目標は、都農の固有種を作ることだそうです。

 

百聞は一見にしかず。

実際に都農ワインを手に取って、その魅力をぜひ堪能してみてください。

 

 

 

 

都農ワイナリー
 〒889-1201
 宮崎県児湯郡都農町大字川北14609-20
 TEL:0983-25-5501
 FAX:0983-25-5502

 https://tsunowine.com/

  

■ワイナリーショップ

 営業時間:9:30~17:00
 定休日:なし(年末年始のみ)

■都農ファームカフェ

 営業時間:11:00~16:00
 定休日:火曜日(祝日の場合翌日)


都農ワイン スタッフさん
都農ワイン スタッフさん

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