Special特集

Features of Kyushu Sake 九州のお酒の特徴

県別に見る酒の特徴

九州の気候と食文化によって、お酒は特徴づけられています。また、その味わいは造られる地域によって大きく変わってきます。 北部九州では、冬場の気温が低く、日本酒造りに向きの風土であり、反対に、比較的温暖な風土である南部九州では、焼酎に向いています。また、アルコールの作用として、米から造る醸造酒である日本酒は、体をあたためます。麦から造るビールや、蒸留酒である焼酎は、体を冷やします。つまり、日本酒は北部九州で、焼酎は南部九州で発展したことがよくわかります。 では、これから県ごとに、「日本酒」や「焼酎」の特徴と、合わせる郷土料理をみていきましょう。

01

福岡県

酒処でありながら、焼酎も生産高!

清酒蔵は57蔵で全国5位の酒処です。酒造好適米の王様「山田錦」が糸島市で作られ、夢一献、吟のさと、寿限無と福岡産酒米も生産しています。全体的には、端麗辛口で、高品質な日本酒が多く、水炊きや辛子明太子などに合います。筑後川沿いには、濃醇甘口の日本酒もあり、もつ鍋や、筑前煮など味の濃い郷土料理にも合います。 また、本格焼酎の製成数量は、 全国4位です。麦焼酎、酒粕焼酎、胡麻焼酎などがあり、量と種類も豊富です。

02

佐賀県

一致団結した、日本酒に熱い!県

佐賀県は"TheSAGA認定酒"(佐賀県原産地呼称管理制度認定酒)をいち早くはじめました。その定義は、佐賀県産の原料(米・麦・水)を100%使用し、県内で製造されているだけでなく、味や香りの審査に合格した純米酒・本格焼酎であること。また、2013年6月に都道府県レベルでは初となる「佐賀県日本酒で乾杯を推進する条例」が制定されています。佐賀の日本酒は、比較的甘口が主流で、甘味のある呼子のいかや佐賀牛などにも、ぴったりです。

03

大分県

麦焼酎のメッカであり、日本酒の存在感もあり!

 2007年1月には「大分麦焼酎」、2007年6月には「大分むぎ焼酎」が地域団体商標として登録されています。いわずと知れた麦焼酎が有名ですが、実は、清酒蔵は30蔵もあり、西の関をはじめとする、日本酒も多く造られています。甘口で濃醇な日本酒が多い中、吟醸酒で定評のある蔵も増えてきています。魚の臭みを消し、旨みを引きだしてくれる日本酒は、関サバ、関アジやふぐ料理などに合います。また、麦の香ばしい香りを楽しめる麦焼酎は、オールマイティ―で、とり天など郷土料理に合います。

04

長崎県

麦焼酎発祥の地である長崎県壱岐の島

1995年7月1日、WTO(世界貿易機関)により地理的表示が制定され、全国で3地域が指定を受けました。麦焼酎の発祥でもある「壱岐焼酎」はその1つに選ばれました。

地理的表示とは酒類の確立した製法や品質、社会的評価を勘案し、原産地を特定して、世界的に保護しようとする制度です。現在、壱岐の島には7つの蔵があり、島の幸である、うにや五島のサバなどの魚介類に合うことでしょう。

焼酎文化が強い風土ですが、日本酒蔵も佐賀県との境から、佐世保、平戸の沿岸に点在しています。長崎名産のからすみと、端麗で甘口の強い長崎の日本酒をちびちび飲むのは、たまりません。

05

熊本県

九州の日本酒の母「熊本酵母」発祥の地

湧水源が1000ヶ所以上にのぼる「水の国」で、熊本県民の生活用水の約8割が天然地下水でまかなわれるほどです。1968年、熊本県酒造研究所の野白金一氏によって分離・培養された吟醸酒造りに最適な「熊本酵母」が日本醸造協会の「きょうかい9号酵母」と定められ、全国の蔵元への頒布が開始されました。今では九州だけでなく、多くの蔵が使用しています。2015年から、県初のオリジナル酒米「華錦」の使用も始まりました。

焼酎は、米焼酎が主流で、人吉の地理的表示「球磨焼酎」が有名です。馬刺しには、九州ではめずらしい端麗辛口の日本酒と、あっさりした料理にもあう米焼酎、どちらもあいそうです。

06

宮崎県

そば焼酎発祥の地 本格焼酎の製成数量が1位!

エリアによって、北部では麦・蕎麦、中部では麦・芋、鹿児島に近い南部では芋焼酎を造っています。世界で初めてそば焼酎を生み出したのが、県内の雲海酒造です。その特徴は、独特な香りとさわやかさで、ほのかな甘みを持ちます。肉巻や唐辛子の効いた料理と合います。宮崎の清酒蔵は2蔵あり、千徳酒造(宮崎県・延岡市)は日本酒だけを造っています。鑑評会でも受賞する、確かな品質の蔵元です。

地鶏炭火焼

07

鹿児島県

"ブームの火付け役"いも焼酎の文化の本場

奄美市、大島郡を除く、鹿児島県内で造られるいも焼酎は、地理的表示「薩摩焼酎」と呼ばれています。さつま芋の香りが強く、地元の黒豚料理、きびなごの酢味噌あえなど、みそ味が濃いものや、油ののったもの、焼酎と同じく甘みのある食べ物との相性がいいです。また、黒糖を主原料とする黒糖焼酎は、奄美大島のみで生産されています。鹿児島県で、唯一日本酒を造っている蔵は、濱田酒造(いちき串木野市)のみです。「薩州正宗」は米のきれいな味わいの日本酒です。

KUGAKO'POINT九州は甘口?好み

九州の日本酒は、他県に比べて比較的甘口にできています。
一番の理由は、九州の醤油が甘いから。南になればなるほど、さらに甘くなります。

現に年間の砂糖摂取量は全国平均444グラムに対して九州は523グラムと多くなっています。ちなみに醤油だけでなく、味噌も甘いタイプが主流になっています。

九州の甘口好みの由来といわれるエピソードをご紹介しましょう。


①「シュガーロード」のおかげで、甘口好みという説

長崎南蛮貿易で荷揚げられた砂糖が長崎の出島から、佐賀を通って小倉へと続く長崎街道を、京・大坂、江戸(現在の京都・大阪・東京)などへと運ばれて行きました。その砂糖が運ばれた街道沿いはカステラや丸ボーロなどのお菓子店舗が生まれ、比較的砂糖が手に入りやすかったともいわれています。そのため、九州人は甘口好みではないかといわれています。


②漁師さんや炭鉱労働者が欲したという説

海に囲まれ、炭鉱も多かった九州は、塩分よりも甘味でエネルギー変換しやすいものを欲するといわれています。


③温暖な気候であるという説

生理的に甘いものを欲する土地柄でもあるということ。

まつもと 久我子くがこ

日本酒コーディネータ-、日本酒文化伝道士。
(一社)日本ソムリエ協会認定資格「J.S.A.SAKE DIPLOMA」取得。
天草生まれ、福岡育ち。お酒・旅行・着物を愛する"九州なでしこ"。
5000酒以上飲んだと自負!100歳まで健康的に楽しく、日本酒を飲み続けるために、酒呑み研究を続けている。
お酒で人と人をつなぎ、酒友を広め、地域活性を応援します。
酒友とは、「酒を一合酌みかわせば、一生(一升)の友。」のこと。
現在、日本酒講師、きき酒師、イベント企画、飲食コンサルと活動中。

アメブロ「日本酒でハッピーライフ」、フェイスブック「酒友100万人計画」主催、LINE「酒友女子部」で活動中♪