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Guide of the Brewery Tour 酒蔵見学の手引き

SAKE NOUVEAU "酒ヌーボー(新酒)"を求め、蔵開きに行こう!

日本酒は寒造り(かんづくり)といって、アルコールを醸す酵母が効果的に活動する冬場に造られています。現在でも、この寒い時期の自然環境を生かして、11月から2月頃には中小の酒蔵で盛んに日本酒が造られています。その一方、大手酒造メーカーでは、工業技術と空調設備により、四季醸造といって、一年を通じて日本酒を醸造する工場型の蔵もあります。

九州の蔵元は中小の酒蔵が多く、1~5月上旬にはお酒が出来たお祝いとして蔵開きが行われています。この時期、ぜひ呑んでいただきたいのは"酒ヌーボー(新酒)"です。出来立てのフルーティーでフレッシュな味わいは、普段、日本酒が苦手だと思っている方でも「美味しい!」と、どなたにも好まれるお酒です。

九州最大の蔵開きは?

九州の2大蔵開きといえば、福岡県の「城島酒蔵びらき」と 佐賀県の「鹿島酒蔵ツーリズム®」があります。
「城島酒蔵びらき」は、11万人を動員する九州最大の酒イベントです。毎年、2月11日祝日前後の2日間に開催されています。旭菊・池亀・筑紫の誉・花の露・比翼鶴・萬年亀・瑞穂錦・杜の蔵・有薫の9蔵の同時開催になります。無料シャトルバスで各酒蔵の新酒を巡り、メイン会場では城島の酒飲みくらべや燗酒コーナー、筑後酒造り唄披露や新・元気鍋など各露店と地元食材を楽しむことができます。

また、「鹿島酒蔵ツーリズム®」は、3月下旬の土日の2日間、矢野酒造・幸姫酒造・富久千代酒造・光武酒造場・峰松酒造場・馬場酒造場の6蔵同時蔵開きが開催されています。2011年、富久千代酒造の「鍋島 大吟醸」が、『IWC』で世界一の栄誉チャンピオン・サケで受賞以来、鹿島は"世界一の酒が生まれたまち"として県内外から注目を集めています。期間中のイベントは、"肥前浜宿花と酒まつり"と"祐徳門前春まつり"と"かしま発酵まつり"が同時開催されています。近年、嬉野温泉酒蔵祭りの塩田会場で瀬頭酒造・五町酒造が、嬉野会場では、井手酒造が参加して9酒蔵となり、九州は最大の蔵開きへとスケールアップしました。

MY蔵開きカレンダーを作ってみよう!

行きたい酒蔵の蔵開き情報は、その蔵や各県の酒造組合のホームページをご確認ください。毎年、おおむね遅くとも1月頃には、新酒蔵開き新情報が公開されます。また、蔵開きの多い2月から3月は、お手製でMY蔵開きカレンダーを作ってみるのもおススメです。土・日に蔵開きが集中するため優先順位をつけやすく、スケジュール管理に役立ちます。

最近では、冬の新酒まつりの以外にも、夏酒まつりや酒造り前に行う秋の酒まつりなど、年2~3回蔵開きを行う酒蔵も増えてきました。ぜひ、気軽に行ける蔵開きの情報をチェックしてみてください。

酒蔵見学の手引き

通年、開いている観光蔵や蔵開きの日程が決まっている酒蔵以外は、必ず見学の日程・時間・人数を事前予約をしましょう。また、お酒の仕込みで忙しい時期には蔵見学を行っていない蔵もあるため、こちらも必ず確認しましょう。

そして「名水あるところに銘酒あり」といわれるように、酒蔵は日本全国の名水の地にあり、都心から離れていることが多いため、電車・バスなど帰りの便の時間を必ず確認しましょう。

蔵見学は、魅力がたくさん!

蔵見学では、普段は見ることのできない麹室(日本酒造りの心臓部)やお酒を造っている工程をたどり、発酵中の仕込みタンク内では、もろみのリンゴやバナナのような香りを堪能できます。

見学中は、案内してくれる酒造りのリーダーである杜氏さんや蔵人さんにどんどん質問してみましょう。自分自身が日本酒になった気分で、どのような環境で、蔵人さんたちがどのような思いで造ったお酒かを実感しましょう。その後は、蔵元さんのご好意で試飲させてもらえたり、貴重な限定酒をお土産に買えたりと魅力がたくさんあります。

蔵見学の7つの心得

案内役の言われたことを守り、作業中の蔵人たちの邪魔にならないように、気をつけましょう。
そして、マナーを守って、気持ちよく蔵見学に行きましょう。

01泥酔しない!やわらぎ水を持参しましょう。

「酒ときどき、やわらぎ水」。お水を飲むことで肝臓のアルコール分解を助けるため、お酒を飲む量の倍は飲みましょう。また、蔵によっては、お酒を造るための仕込み水をやわらぎ水として置いてあります。日本酒になる前の仕込み水とその水で出来た日本酒のビフォア―&アフターを楽しみましょう。

02匂い大敵!納豆、香水はNG!

酒造りに必要な蒸米を糖化させる麹菌は繊細な菌で、納豆などに含まれる強い菌に負けてしまいます。そのため、お酒の仕込み期間中には、蔵人たちは納豆を食べないと言われています。その他、ヨーグルト、みかん、香水、漬物などは、蔵見学の当日は控えましょう。

03服装は山登りの恰好で!

試飲では右手に酒瓶やつまみ、左手に猪口を持つことが多いため、両手が空く動きやすい格好が理想です。また、蔵内は水場が多いため、ヒールの低い、滑りにくい靴が良いでしょう。その上、意外と蔵内は寒いため、帽子やカイロなど防寒グッズも役に立ちます。また、買ったお酒を持って帰るための丈夫なバックやリュックなどもあるといいですよ。

04蔵見学は、安全第一

ホースや濡れた床、仕込みタンクへの急な足場など、転倒する危険が伴う場所もあります。特に発酵中の仕込みタンクでは、"日本酒の中で泳ぎたい~"と思われる方もいるかもしれませんが、2メートル近くもあるタンク内に落ちたら、二酸化炭素で窒息する危険もあります。また、物を落とすとタンクすべてのお酒がダメになります。香りや発酵状況を見るためにタンク内を覗く際には十分、注意してください。

05すきっ腹では、呑まない!

胃の中に、何も入れていない状態でお酒を飲むと、アルコールから吸収してしまい、早く酔いやすくなります。また、昼から飲むと、まだアルコールを分解する酵素ができていないため、酔いやすくなります。必ず、お腹の中に何か入れてから、飲みましょう。※1
※1 昼間は副交感神経の活動が鈍いため、アルコールを分解する酵素の働きが鈍いこと、また日中の方が血流の周りが良いことから、夜に比べて酔いやすいといわれます。

06公共の交通機関を使いましょう。

蔵見学・蔵開きでも、車を運転する方には、署名をお願いし、ハンドルキーパー・シールを貼って厳しくチェックしています。お酒を飲む方は、飲酒運転撲滅のためにも、必ず公共機関を使いましょう。

07"酒友"と協力して、帰るまでが遠足です。

蔵見学も無事に帰らなければ、楽しかった思い出となりません。ほろ酔い気分も台無しになります。酒友同士で、忘れものや電車の乗り過ごしなどがないように、協力して帰りましょう。

"酒友"とは、一合一会。お酒を一合を酌み交わした一升(一生)の呑み友のことです。

蔵開きを楽しむ4つのコツ

  • 01

    振る舞い酒(新酒)を楽しむべし

    蔵によって、猪口を買えば、いろいろな新酒が飲めたりしますので、ぜひトライしてみて!

  • 02

    蔵開き限定酒を買うべし

    限定酒は、蔵でしか買えない、貴重なお酒です。新酒で水で割っていない原酒(アルコール度数が18度前後)があればお買い得です。

  • 03

    地元の出店料理を食べるべし

    蔵開きには、地元の飲食店も参加している場合があります。地酒にあった、地元産品を食しましょう。

  • 04

    新しい"酒友"と愉しむべし

    お酒は人の和を結ぶ飲み物です。不思議と新しい酒友に出会えるチャンスがたくさんできます。ぜひ、やわらぎ水の効果を教えてあげて、話すきっかけにしてください。

持っていくと便利なもの

  • やわらぎ水(悪酔い防止)
  • ちょっとしたつまみ(すきっ腹防止)
  • ウエット・ティッシュ(日本酒のべたつきを拭く)
  • ペン(美味しかったお酒をメモするため)
  • 丈夫なバッグやリュック(買った日本酒を持ち帰る)など
KUGAKO'POINTお酒の神様に、ごあいさつをしよう!

私は、酒蔵はパワーズポットだと思っています。なぜなら、昔から酒は神饌として、米の次に神棚に祭られます。それを造る場所である酒蔵はとても神聖です。それに酒蔵には、必ず神棚があります。昔は、お酒を醸すための神様、お米を蒸すための火の神様、井戸にある水の神様、お酒を販売する商売の神様、お稲荷様と4つの神様を祭っていたそうです。今では、日本第一酒造神として名高い松尾神社※2もしくは、地元の神様を祭っているところが多いようです。

美味しいお酒に感謝を込めて、酒蔵に入ったら、必ず、神棚に一礼するようにしています。

※2 松尾神社 京都嵐山にあるお酒の神様。霊泉「亀の井」を使うとお酒が腐敗しないといい伝えがある。
まつもと 久我子くがこ

日本酒コーディネータ-、日本酒文化伝道士。
(一社)日本ソムリエ協会認定資格「J.S.A.SAKE DIPLOMA」取得。
天草生まれ、福岡育ち。お酒・旅行・着物を愛する"九州なでしこ"。
5000酒以上飲んだと自負!100歳まで健康的に楽しく、日本酒を飲み続けるために、酒呑み研究を続けている。
お酒で人と人をつなぎ、酒友を広め、地域活性を応援します。
酒友とは、「酒を一合酌みかわせば、一生(一升)の友。」のこと。
現在、日本酒講師、きき酒師、イベント企画、飲食コンサルと活動中。

アメブロ「日本酒でハッピーライフ」、フェイスブック「酒友100万人計画」主催、LINE「酒友女子部」で活動中♪