2024年03月01日

今注目のジビエ、大分・宇佐でその真の味力に迫る

ジビエとはシカ、イノシシに代表される野生動物の肉のこと。フランス料理などではシカ肉がメインの食材になるなどポピュラーな存在だが、日本では近年注目されているとはいえ、まだまだ認知度は低いのが現状。大分県宇佐市にある『宇佐ジビエファクトリー』では、ジビエの処理、加工、販売を通じて認知度・理解度の向上、普及に努めている。

大分県は北海道に次いでシカ・イノシシの捕獲頭数2位! だが・・・

町中、特に都市部で生活しているとピンとこないが、現在シカやイノシシは全国的に頭数が増えすぎて問題になっているという。特にシカは適正頭数の10倍いるといわれ、人里に降りてきた個体が畑を荒らし、深刻な農業被害を出している。そのためシカ・イノシシは害獣とされ駆除の対象になっており、大分県は猟友会の協力もあり、捕獲頭数としては北海道に次いで2位となっている。しかし、捕獲されたうちの約97%が廃棄されているのが現状で、それも猟師が捕獲の証拠として役所に届けるための尻尾だけを切り取り、残りは山中にそのまま遺棄されることも多いという。その様子を見るのが忍びないと、地元農家の方から相談を受けたのが山末成司さん。食肉加工業を営んでいた山末さんは使命感に駆られジビエを研究し、平成30年3月に『宇佐ジビエファクトリー』を立ち上げた。

安心・安全なジビエの証、国産ジビエ認証取得

清潔な環境で解体処理を行う
ジャパンジビエアカデミーでは罠猟の講習なども行う

『宇佐ジビエファクトリー』のジビエへのこだわりは、とにかく美味しいこと。ジビエはどうしても“臭い”“固い”といったネガティブな先入観を持たれがち。実際に食べて美味しくなかった、臭かったという経験を持つ人もいるだろうが、それは血抜きと鮮度、食べる部位の問題だという。
まず血抜きは捕獲した直後に行うことが重要で、そのため実際に捕獲現場に入る猟師に対し、山中での血抜きの仕方等のレクチャーを行っている。そして鮮度に関しては、冷蔵式で衛生的な解体処理施設を所有。令和4年で年間約1,300頭の処理実績があり、この規模の処理施設は全国的に見ても数えるほどしかないという。これらの実績から令和元年7月2日に、国産ジビエ認証を取得している。また、ジビエは野生動物ゆえ、人間が食べて美味しいと思える部位は限られている。捕獲時季、雌雄、年齢等個体差も大きい。食用に品種改良され育てられた家畜と異なり、シカ1頭の本当に美味しい可食部位はわずか15〜16%だという。こういったジビエの特性を知り尽くしているからこそ、『宇佐ジビエファクトリー』のジビエは自信を持って美味しいと言えるのである。
なお、商品にできる部位以外は、栄養価の高い高級ペットフードとして加工。同市内にあるアフリカンサファリの動物のエサとしても活用されている。
また2023(令和5)年には、国内初となるジャパンジビエアカデミーを開校。罠の設置、捕獲、解体などの実践授業と、正しいジビエの知識や命の大切さを学べる座学を通じて、ジビエの普及、次世代への文化の継続に取り組んでいる。

ジビエ初心者でも簡単調理の生ソーセージ

ジビエソーセージの調理例
ジビエソーセージは猪肉と鹿肉の2種類

同社のジビエ商品で代表的なものは生ソーセージ。美味しさとともにこだわる無添加を実現するために、発色剤の必要がない生ソーセージとした。フライパンで焼くだけなので、ジビエを初めて食べる人も簡単に調理でき、スモークをしていないため、肉の美味しさをダイレクトに感じることができる。シカ肉を低温調理したローストヴェニソンもおすすめ。あっさりしながら深い旨みがあり、赤ワインなどと合わせると最高のご馳走だ。
また、ジビエを味わうなら栄養価にも注目したい。シカ肉は高タンパクで低カロリー。脂質は牛肉の1/6ほどで鉄分は約2倍、ビタミンB1やB2も豊富に含まれている。イノシシ肉は豚肉に比べ鉄分が約4倍、ビタミンB12が約3倍とのデータもある。さらに自然の餌を食べて育っているので、低アレルゲンであることにも注目したい。
購入はオフィシャルのショッピングサイトのほか、宇佐市内の道の駅、産直所、一部のスーパーなどでも可能だ。