25年、まぼろしのように去来しつづけてきた邪馬台国は、いま、ふるさとの近くで、雲仙岳と多良岳の間にひろがっている。
この推論を古事記、日本書紀などの表記を表音文字として解読し、それを遺跡、古墳など独自の発掘発見で裏付けながら遂に邪馬台国島原説に至るまでの情熱の成果の物語である。
故、筑紫の国は白日別と謂ひ、豊の国は豊日別と謂ひ、肥の国は建日向~熊曽の国は建日別と謂ふ
夫人が読む九州4つの古名の「日」を、干潟の「干」と理解したことで、謎にみちた記紀解釈の糸口をつかんだ作者の挑戦が始まる。
またその推論には、地勢上からも考古学上からも裏付けを必要とする。白い杖を引きながら、県内でその存在を疑われていた古墳を、「島原半島のある村に、私は妻をつれてひそかに調査に出かけた。そしてそこで、想像していた以上の100メートルに近い柄鏡式の前期形成の前方後円墳」を発見し、自説の確証を積み重ねていく。
「卑弥呼以死。大作家。径百余歩」「貢白珠五千孔」魏志倭人伝にある卑弥呼の墓と、その死後、魏国に朝貢した真珠の記述である。
「天然真珠の産地は、佐世保湾と大村湾であった」。作者に残されたのは、卑弥呼の土墳墓の発見だけとなる。
●昭和55年(1980)作者逝去。●昭和61年(1986)佐賀県吉野ヶ里遺跡で、弥生時代の甕棺墓500基が発見される。
●昭和63年(1988)吉野ヶ里遺跡の大フィーバーが起こる。
(福田八郎)
(長崎文化ジャンクション 文化百選より)
「まぼろしの邪馬台国」が映画になる。宮崎康平役を竹中直人氏、夫を明るくささえる妻・和子さんを吉永小百合氏が演じる。監督は「トリック劇場版」などで知られる堤幸彦氏。脚本は大石静氏が手がける。
映画では二人の出会いから、考古学に興味を持つきっかけとなった島原鉄道復旧作業の際の土器の出土、さらに、夫婦二人が九州を二人三脚で歩いて現地調査した姿を描く。夫の情熱を支え、それに応える夫婦の絆、そしてロケ地となる九州の美しい風景も見どころ。