記事 ARTICLE

国際色豊かな長崎のご当地グルメ「和華蘭(わからん)グルメ」を味わう!

かつて長崎だけが中国やオランダなどと交易を交わし、さまざまな人と文化が上陸してきた時代がありました。とくに食文化は影響が大きく、いろんな国の料理が味わえる長崎グルメは、別名「和華蘭(わからん)グルメ」と呼ばれています。和は日本料理、華は中国料理、蘭はオランダやポルトガルなどの西洋料理を指します。それらの料理が一堂に会するのが「卓袱(しっぽく)料理」です。ほかにも中国にルーツを持つ「ちゃんぽん」。トルコとの関係性がウワサされる「トルコライス」。そして卵と砂糖をたっぷり使った甘い「ミルクセーキ」まで、知られざる長崎グルメをご紹介します。

和気あいあいと食事を楽しむ海外スタイル

長崎には卓袱料理を専門とする料亭が数軒ありますが、中でも女将自ら手作りし、心のこもった料理で高い評価を得ている「料亭春海」へお伺いしました。場所は国宝・崇福寺のそば、八坂神社の参道沿いにあります。石階段の先には、明治期に邸宅として建てられた純和風の建物があり、季節の木々に囲まれた佇まいは大人の隠れ家を感じさせます。
さて、「卓袱料理」の意味ですが、「卓」はテーブル、「袱」はテーブルクロスを表しています。また料理が並ぶ円卓はベトナムなど東南アジアの言葉に由来し、昔から「シッポク台」と呼んでいたそうです。ひとつの円卓に大皿の料理が並び、それを直箸で取り分けて味わうスタイルは中国から伝わっています。
長崎は、1571年(元亀2)の開港によりポルトガル人や中国人が町中に住んでいた時代がありました。なかには日本人妻まで持った人もおり、彼らの家庭で食べられていたのが自国の料理です。身分や文化の違いを越え、ひとつのテーブルを囲み、和気あいあいと食事を楽しむスタイルは長崎の人々に広く受け入れられたのです。

長崎が甘い!とは、砂糖王国・長崎のこと

料理はひとり9,000円~(税サ別)
料理を見てみましょう。刺身やアラの湯引きは、長崎の近海で獲れる魚を使った和の料理です。角煮は、中国の文人・蘇東坡(そとうば)が愛した中国料理。そして海老のすり身を食パンに挟んで揚げた「ハトシ」。これは中国語表記だと「蝦吐司」となり、「蝦」が「海老」、「吐司」は「トースト」の語意になるのだとか。大鉢や中鉢はスープ仕立ての料理で、これはベトナム料理に由来するものです。そして甘い豆の蜜煮! デザートのお汁粉まで約13品が登場します。
江戸時代、長崎には海外からたくさんの砂糖が輸入され、当時は贅沢品として扱われていました。この貴重な砂糖を使い、大切な客人をもてなしてきたのが長崎料理です。料理が甘めなのは、おもてなしの心が今も伝わっているからなんですね。ちなみに、甘い料理を“長崎が近い"と言って誉めたたえるのも、砂糖王国・長崎を象徴する言葉として知られています。
実は、卓袱料理にはマナーがあり、女将による「御鰭(おひれ)をどうぞ」の挨拶があってから食事がスタートします。この「御鰭」は、小さく白いお餅「鰭餅」が入ったお吸い物。昔はひと碗に、鯛一匹から一つしか取れない「胸鰭」が入っていたようで、おひとり様を鯛一匹使ってもてなす心意気を伝える料理になっています。長崎の豊かな食文化は、その贅沢さにも魅力あり。卓袱料理の歴史と文化を感じながら、ゆっくり時間をかけて味わいたいものです。
料亭春海

長崎市鍛冶屋町7-48

https://100nen.info/harumi/

貧しい中国人留学生のために生まれた「ちゃんぽん」

長崎を代表する麺料理と言えば、「長崎ちゃんぽん」です。誕生秘話をお聞きするため、発祥の名店「中華料理 四海樓」に行ってきました。
ちゃんぽんが誕生したのは長崎の近代化が進んでいた明治時代です。それも、中国・福建省から長崎にひとり降り立った19歳の青年・陳平順(ちんへいじゅん)によって生み出されています。若き平順も、最初は行商で何とか生活をしてきましたが、1899年(明治32)にレストランと旅館を兼ねた店「四海樓」を開業。ここでちゃんぽんが誕生します。
創業当時の四海樓。看板には英語も使われていますね
きっかけは、長崎に渡航してくる貧しい中国人留学生たちに、“安くて栄養がある料理をお腹いっぱい食べさせたい"という優しい想いからでした。多くの食材をひとつの鍋で一気に炊き込んだ「ちゃんぽん」のルーツは、福建省の郷土料理である「湯肉絲麺(トンニーシーメン)」。平順は、これに長崎近海で獲れた魚介、長崎でつくられていたモヤシ、当時はまだ珍しかったキャベツを加えます。スープも鶏ガラだけでなく豚骨も加え、栄養満点の麺料理が完成するのです。
四海樓の創業者であり、ちゃんぽんを考案した陳平順氏

唐灰汁入り麺を使ってこその長崎ちゃんぽん

長崎ちゃんぽん1080円(税込み)
ちゃんぽんという呼び名ですが、福建語で“シャポン"。つまり“ご飯を食べましたか?"の挨拶言葉からこの名が付いたと言われています。また長崎ちゃんぽんの特徴として、唐灰汁(とうあく)入りの麺が使われていることです。これは、麺を作るときに使用する“かんすい"に当たるもので、長崎でしか製造が許されていません。一緒に炊き込むことで独特のうま味と風味が生まれます。これでないと、長崎ちゃんぽんとは言えないんですよ。
それにしても、この錦糸卵が乗った長崎ちゃんぽんの美しいこと! 一世紀を越えてなお、長崎の人々に愛される伝統の味を、いただきます!
四海樓の5階にある展望レストラン。長崎港が一望できるロケーションの良さも人気です。
長崎ちゃんぽんが誕生して110年以上! その長い歴史を知る「ちゃんぽんミュージアム」が併設されています。入場料無料ですので、お食事の後にでも見学してみて下さい!

ピラフ、ナポリタン、ポークカツがひと皿に盛られた「トルコライス」

大人のお子様ランチとして名高い「トルコライス」って、どんな料理?とよく聞かれます。それは、ひと皿に3つのメニューが乗ったワンプレート料理。長崎市内で長年洋食レストランを経営する「メイジヤ」に行って、味わってきました。
トルコライスの名前の由来は、トリコロールライスがなまった説、スパゲティがイタリア、ピラフが中国、その間にあるトルコからという説など諸説あります。食材もピラフがカレー、トンカツがハンバーグなどバリエーションもさまざま。九州最古の喫茶店といわれる「ツル茶ん」でいただけるスタンダードなトルコライスも捨てがたいのですが、私的にはドライカレー、ナポリタン、ポークカツ、デミグラスソースの組み合わせが王道で最強に美味しいと思うのです。
トルコライス790円。見た目通りボリューム満点!地元人はもちろん観光客にも大人気
肉屋がルーツというこちらでは今も厳選した上質な豚肉を使用。揚げたてのサクサクポークカツには自家製デミグラスソースがたっぷりかけられており、ドライカレーやナポリタンともよく合います。
家族みんなで座れる広いテーブル席は、ランチ時大混雑!
長崎市の繁華街にある創業60年以上の老舗レストランメイジヤは、幼い頃から家族でよく食べに行った懐かしのレストランです。
レストランメイジヤ

長崎市浜町3-18 2F

甘く優しい口どけにうっとりしちゃうミルクセーキ

ミルクセーキ680円。甘いのに後味はサッパリ。シャリシャリ食感のひんやりスイーツ
見た目はまるでミルクシャーベット! スプーンですくって食べるタイプの名物ミルクセーキは、夏の暑さを和らげる氷菓子として昭和初期頃に長崎で誕生したと言われています。夏はもちろん、年中メニューに掲げられており、ご当地デザートとして地元で親しまれているスイーツです。
グラスにこんもりと盛られたこちらのミルクセーキは、砂糖から作る自家製の蜜と卵、練乳を混ぜ合わせて原料を作り、かき氷と混ぜ合わせた逸品。口にふくむと冷たさと上品な甘さが広がり、ゆっくりと溶けていきます。和菓子屋ならではの繊細な味わいにうっとりしてしまいます。
明治20年創業の和菓子屋「白水堂」。店舗奥に喫茶「志らみず」が併設されています
節句を始め、長崎のお祝い事には欠かせない桃かすてらも並びます
志らみず(しらみず)

長崎市油屋町1-3

以上、長崎の和華蘭グルメをご紹介しました。

長崎に来たら、この「和華蘭」をキーワードにお店を探して、旅の思い出を作ってみてくださいね。

地図を見る

Google Mapの読み込みが上限を超えた場合、正しく表示されない場合がございますので、ご了承ください。

関連するタグ

タグ一覧を見る

関連記事

週間記事ランキング

この記事を書いたフォトライター

PAGETOP