北海道や北陸地方が深い銀世界の中に眠っているというのに、九州は「ここは、日本か」と疑いたくなるほど春めく。
阿蘇、桜島、雲仙、別府‥‥の地熱でいつも暖め続けられてきた九州の大地のぬくもり。日本列島最南端の恩恵、天の恵み、地の利‥‥。
風花が終るのを待ちかねたように雲仙では明かりの華ぼうろの灯が点る。それを合図のようにして全九州の”マグマ“が一斉に噴き出す。
人の和が燃えて、古代の神々が舞い遊び、国際色豊かにランタンが灯り、港にイルミネーションが輝く。
日本のみやびの情緒の灯籠がゆらぐ‥‥。
立ち上る湯煙りが七彩に染まる。
めくるめく華やぎに加えて味覚の楽しみと温泉のぬくもりも加わる。
阿蘇のお宮の灯の輪が廻り、原野にオレンジの壁が疾る頃、春を先駆けした九州灯の祭典は終る。
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お好みの地を二つ、いや三つほど選んで気ままな旅の中にとっぷりと身も心も解放させよう――。