日南市の油津港と広渡川河口の1400mを結ぶ「堀川運河」は、江戸時代に飫肥藩が築造したもの。上流の森林で伐採される飫肥杉は、粘りがあって水に強いため「弁甲材」という造船材として全国に搬出された。かつてはこの材木を筏に組んで運河を運ぶ「弁甲筏流し」の風景が名物だったらしい。運河に架かる「乙姫橋」は、ロケにも使われた油津のシンボルである。
また、1960年後半まで沿岸漁業で活躍し、50年ぶりに復元され運河に係留中の帆走木造漁船「チョロ船」や、漁具を販売し、大正末期から戦前にかけて「東洋一のマグロ基地」としてにぎわった建築当時の姿をとどめる「杉村金物本店・倉庫」とともに、堀川運河は、「未来に残したい歴史文化財産百選」に選ばれている。さらに、競売にかけられていた「赤レンガ館」を地元有志が出資して守り、地域住民によるイベントや2006年の赤煉瓦ネットワーク全国大会が開催されるなど、油津の歴史的建造物と堀川運河の景観を生かしたまちづくりが進められている。
宮崎の最南端・都井岬には、日本在来馬の一つ「御崎馬」が放牧されている。足が短くがっしりした野生馬たちは、天然記念物に指定されて毎年子馬も生まれ、太平洋を背にゆったりと草を食む光景が風物詩となっている。都井岬から北に上がった幸島は、やはり天然記念物のニホンザル生息地として全国にも有名。ここのサルたちは、いつの頃からか芋を海水で洗ったり、砂混じりの麦を海水で選り分ける知恵を身につけた「文化ザル」である。
寅さんとリリーが聞きほれた奄美の島唄は、市内の居酒屋などでも「唄者」が美声を披露してくれるが、昼間に聞きたいならこの「奄美民俗村」へ。ホテルに併設された観光施設で、奄美伝統の菓子作り体験、黒砂糖作り体験などもできる。園内の一角で、島唄も一日に数回演奏されている。
世界の着物党が憧れる本場大島紬は、奄美大島の伝統に培われた100%絹糸使用の国指定「伝統的工芸品」。染め色によって泥大島、泥藍大島、草木泥藍大島、色大島、白大島に大別され、高貴な風合いが楽しめる。ここでは、製造工程見学や泥染め体験(ハンカチやTシャツなど)、着付け体験、手織り体験など、大島紬の魅力をたっぷりと学べる。もちろん、直販や有名作家の展示なども。
奄美のリリーの家で、寅さんや満男も一緒に飲んでいたのが伝統的な黒糖焼酎。のどに広がる黒糖の風味は、女性にも飲みやすく最近人気も上昇中。数十種の銘柄の中でも人気が高い「浜千鳥」「高倉」の蔵元が併設する「浜千鳥館」では、製造工程の見学、試飲、焼酎の購入などができる。製造見学は、作業が行われている10~5月がおすすめ。
鹿児島人たちが、遠く故郷を離れても常に思い出すのは桜島。鹿児島市内には、城山展望台や仙巌園、長島美術館などいくつもの「桜島絶景スポット」がある。寅さんが奄美大島に渡る船を待っていた北埠頭あたりも、真正面の桜島が力強く迫ってくる観光ポイントだ。