旧相良藩時代から職人の町として知られ、今も古い町並みが残る人吉市鍛冶屋町。ここで、明治時代からの茶壷や急須などを展示し、茶の歴史を紹介するのが「茶の蔵」。茶の茎を使った塗り壁や、商家の中庭など落ち着いた雰囲気が魅力。もちろんお茶も味わえる。
平家の落人が北部山間地の手蓑に茶栽培を始めたという古い言い伝えがある。本格的な栽培は、明治元年島津氏の軍役地杉の美林を伐採、村人に払い下げ、山野を開墾、茶の実を播種させたのが始まり。以後、技術者を招き、茶業組合を設立。宇治茶の製法を伝習、緑茶の製造所を設置し、生産拡大に努めた。昭和9年、県の奨励で紅茶工場を設置。昭和13年、天覧に供する紅茶を製造献上の栄光を得た。以降紅茶の生産拡大を推進していたが、昭和40年代初め貿易自由化国際紅茶の低迷に伴い抜根、緑茶への転換をはかると共に、町は茶を基幹作物に定め、北部地域は山間冷涼で上級茶生産地帯、中南部地域は温暖で土地基盤整備が確立し、大型機械化体系による低コスト良質茶生産地帯として主産地体制確立に努めている。
知覧茶は、煎茶の中でも、深むしのお茶が多く、見た目は細かく粉っぽいが、渋みが少なく、色濃く味濃い、コク、旨味があって、外観より内質を重視したお茶が、栽培製造される。
茶園面積は、今では、1,200haをこえる国内でも有数のお茶の産地。お茶の品質もよく全国をはじめ九州や県の各種品評会で毎年上位入賞し「知覧茶」の銘柄は広く知られるようになった。
お茶の生産も機械化が進み、茶園では乗用型摘採機や乗用型茶園管理機の大型機械が往来し、茶工場はコンピューター集中管理により製造している。また、環境にやさしいクリーンな茶づくりに努め、産地直売する小売茶は毎年3回規格統一審査を実施し、消費者に安心して飲んでいただくお茶づくりに専念している。現在、知覧では観光地でどこでもおいしいお茶を飲ませてくれると大評判である。
※煎茶のおいしい入れ方(3人分)
茶葉:5g 湯量:300cc 湯温:80℃ 浸出時間:1分
茶のはじまりは、古来自生するヤマチャを利用して生産していたといわれている。肥後藩主細川候が山鹿市鹿北町星原と上益城郡山都町白糸に御前茶園を設けたのが茶にかかわる最初の記録のようである。
元禄年間(1688~1704)、肥後と日向の国境の番所役人が、馬見原(山都町)付近の茶を賞賛し「青柳」と命名、藩主細川候に献上したところ大いに賞味されたので、明治維新まで毎年藩主に献納したと伝えられている。
享保年間(1716~1736)、浜町(山都町)に萬屋という商家があり、矢部茶を取り扱い販路を熊本方面に伸ばしていた。
明治7年に「紅茶製法布達案並製法書」が勧業寮から出されて紅茶の生産が奨励されたが、8年には山鹿町(山鹿市)に、翌9年には人吉町(人吉市)に我が国で最初の紅茶製造所(伝習所)が設けられた。
(釜炒り茶)
釜炒り茶は佐賀県嬉野市を主産地とする嬉野製と、熊本県や宮崎県の山間地で生産されている青柳製があった。嬉野製は釜が約45度程度に傾斜しているのに対して、青柳製の釜は水平という特徴があったが、機械化によって両者の差がなくなった。
青柳製の釜炒り茶は、一説には加藤清正(1562~1611)によって朝鮮半島から連れてこられた大工、石工、左官などの技術者を熊本城の築城後に山都町加勢群に定住させたが、ヤマチャで茶をつくり、その技術が後世に伝わったという。
※釜炒り茶のおいしい入れ方
一般的には中国緑茶(釜炒り茶)と同様に熱湯で入れるが、煎茶の入れ方に準じても違った味と香りを楽しむことができる。煎が利いて最後まで楽しむためには、茶葉は煎茶より気持ち多め、湯温は同じかやや高く、浸出時間は短めに。具体的には、茶葉1人分2.5g、湯温70度、急須の蓋をしてから30秒で注ぐ。
また、釜炒り茶農家の茶ムリエが教えるウラ技は二煎で一杯の茶を淹れる方法。一煎目は少なめのぬるい湯で淹れ、二煎目を少ない熱湯で淹れることで、釜炒り茶特有の香りを楽しむことができる。
17世紀に都城地域で栽培がはじまり現在産地は県下全域に広がっている。江戸時代に記された「三国名勝図会」の物産の項には、都城茶について次の記述があり、昔から都城が茶の名産地であることを紹介している。太平洋戦争当時、茶園は他の農作物栽培に転換されて、山間部では焼き畑に自生する山茶を利用した。米良、椎葉、諸塚、五ヶ瀬地方の山茶が珍重され、戦後多くの茶園が復活するまでは、この山茶が釜炒り茶の主流を占めていた。
茶の生産量は九州では、1位は鹿児島、2位は宮崎。産地は県下全域に広がり、気候差を生かして早場、中間、遅場の各地帯に分けられる。全生産量のほぼ8割を煎茶が占め、県央は深蒸し・中蒸し茶。霧島盆地の平坦地や太平洋岸では普通煎茶を生産している。高千穂町、五ヶ瀬町を中心とする北西の山間部は釜炒り製玉緑茶の産地である。
オススメのお茶「五ヶ瀬茶」は、標高500m~800mの高地で栽培されており、冷涼な気候のため良質のお茶ができる産地である。またこの気候のおかげで害虫が少なく無農薬での栽培が可能な地域。五ヶ瀬の釜炒茶は蒸して作った煎茶とは異なり、鉄釜で炒って作るお茶で釜香と呼ばれる香りが特徴のお茶である。また水色が黄金色で勾玉形の形、そしてすっきりとしたのど越しが特徴のお茶。釜炒茶は日本では九州の一部でしか生産されていない幻のお茶となっている。
※釜炒り茶のおいしい入れ方(3人分)
茶葉:6g 湯量:180cc 湯温:90℃ 浸出時間:1分