湯布院町(現由布市)に生まれ育った人で由布岳に登ったことのない人は稀だろう。なにしろ町中のどこにいてもこの山は見え、またその自然の息吹を感じることができる。それほど身近な山である。
由布岳は標高1584mで、東峰と西峰のふたつの頂きをもつ双峰の山。「豊後富士」とも言われ、多くの登山客を集める。登山口は別府市との境にあり、冬季をのぞけば、個人差はあるものの4時間~5時間で往復することができる。山頂は360度の眺望があり湯布院の町並の全貌が見渡せる。冬季には樹氷が見られ、登山後の温泉は格別。町歩きに留まらず、一度は登っておきたい山である。
この由布岳を眺めるポイントも多数。登山口から下った「狭霧台」は、真横に由布岳を仰ぎつつ、湯布院名物の朝霧を眺められるポイント。「牛喰い絶叫大会」が開催された丘も近く、水野ハルカも大阪に向かう途中、ここでトラックを降りて町を眺めている。
『風のハルカ』放映時にタイトルバックに使われた映像は、くじゅう方面に向かうやまなみハイウェイ上の「蛇越峠」からのもの。展望所からは意外に広いすそ野をもつ由布岳と湯布院の町の全貌が見張らせ、雄大な気持ちになるとともに、どこか自然の優しさも感じる。エンディングでは峠から見える朝霧の風景が使われた。
九州を代表する特産物と言えば焼酎。焼酎にもコメ、ムギ、ソバなどいろいろあるが、鹿児島県と宮崎県南部で造られるのはイモ焼酎が主流だ。NHK連続テレビ小説『わかば』は、主人公・若葉が身を寄せる伯父の家が焼酎の醸造会社を営んでいるという設定で、焼酎造りのシーンもたくさん放映された。そのロケ場所となったのが日南市油津の「京屋酒造」。
油津は江戸時代に飫肥杉の積み出し港としてにぎわい、昭和初期にはマグロ漁の基地として全国に名をとどろかせた港町だ。
この油津の京屋酒造は1834(天保5)年創業の歴史ある蔵。甕仕込みによる少量生産に徹した醸造元である。とくに特徴的なのが、原料となるサツマイモを有機農法で自家栽培し、さらに麹用の米作りにもアイガモ農法で取り組んでいるところ。こうした手作り感はドラマの数々のシーンにも反映していたのではなかろうか。
また面白いことにドラマの中で造られたイモ焼酎「金のまほろば」がラベルもそのままに実際に製品化されている。ちなみに、販売元は「焼酎日南協同組合」で「京屋酒造」ではなかった。