今日、日本は世界第二位の経済大国に成長してきた。その経済大国日本の基幹産業として、造船業や鉄鋼業は世界のトップレベルにあり、これら基幹産業の礎となっているのは、幕末の雄藩による近代化事業と、明治政府における殖産興業である。
日本の近代化の過程においては、外国の機械・技術をそのまま導入するのではなく、在来技術で整備機器を作り、試行錯誤を重ねて新技術による生産を試みるという異例の形を採っており、世界でも類を見ないものである。また、当時、欧米以外の多くの国が西洋技術を導入したにもかかわらず、急速な近代化に成功したのは日本のみであり、欧米と肩を並べて、植民地化を免れた。
九州は、それらの過程において先導的役割を担い、かつ、そのことを示す遺産が現在まで数多く残されている。アジアの小国が、西欧の技術を独自に改善し、短期間で飛躍的な経済発展を成し遂げたという世界的な事例の歴史的事実を証左するものとして、九州近代化産業遺産は極めて重要である。
〈九州近代化産業遺産研究委員会〉
端島は戦艦に似た島影から「軍艦島」と呼ばれており、長崎港の南西約18㎞の沖合に浮かぶ周囲1.2㎞の島である。1890年から三菱高島炭鉱の経営によって主として八幡製鉄所向けに製鉄用原料炭を供給してきた海底炭鉱である。1916年以降、炭鉱の開発と並んで従業員のための住宅の建設が盛んに行われ、最盛期には5000人を越える人口を擁し、日本初の高層鉄筋アパートが島内に林立した。土地の有効利用のために地下に浴場やパチンコ店があり、当時、人口密度は日本一だったと言われているが、1974年の閉山以降3ヶ月で無人島となっている。
最近では、そのネーミングと独特の島影から全国放送にも取り上げられ反響を呼ぶなど注目度は高まってきており、軍艦島クルーズも人気となっている。