大君の遠の朝廷とあり通ふ島門を見れば神代し思ほゆ(関門)
豊州の企救の浜松心いたく何しか妹に相云ひ始めし(小倉)
ほととぎす飛幡の浦にしく浪のしくしく君を見むよしもがも(戸畑)
昨日こそ船出はせしかいさな取りひぢきの灘を今日見つつかも(響灘)
ちはやぶる金の御崎を過ぎぬともわれは忘れじ志珂の皇神(鐘ヶ江)
志賀の海人の一日もおちず焼く潮の辛き恋をも我はするかも(志賀島)
行き帰り常に我が見し香椎潟明日ゆ後には見るよしもなし(香椎)
草枕旅行く君を荒津まで送りは来れど飽き足らずこそ(博多湾)
草香江の入江にあさる芦鶴のあなたづたづし友なしにして(博多湾)
風ふけば沖つ白波かしこみと能古の泊にあまた夜ぞ寝る(能古島)
ますらをと思へる我や水くきの水城の上に涙のごはむ(水城)
松浦川七瀬の淀は淀むとも我は淀まず君をし待たむ(唐津)
松浦県佐用姫の子がひれ振りし山の名のみや聞きつつ居らむ(唐津)
遠つ人松浦佐用姫つま恋にひれ振りしより負へる山の名(唐津)
春さればまず咲く宿の梅の花ひとり見つつや春日暮さむ 山上憶良
青柳梅との花を折りかざし飲みての後は散りぬともよし 沙弥満誓
我が園に梅の花散るひさかたの天より雲の流れ来るかも 大伴旅人