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日本の原風景が残る福岡の秘境「東峰村」徹底ガイド

古くから連綿と受け継がれてきたやきものと先人の知恵が活かされた美しい石積みの棚田の里「東峰村」は、日本の原風景が残る福岡の“秘境”です。史跡や名所、自然と特産品の紹介など東峰村の魅力をたっぷりご紹介します。

「日本で最も美しい村」の一つ、東峰村

「日本の棚田百選」にも選ばれた竹地区の棚田、心を癒す原風景です。
福岡県中央部の東端、大分県日田市と隣接し、霊山・英彦山の麓にある東峰村は、福岡市内から車で約1時間で訪れることができる癒しのスポット。村の約86%が山林・原野であり水源も豊富なことから、風光明媚な景観がそこかしこに溢れています。
また、古くから受け継がれてきた景観や文化を守り、後世へと受け継ぐ取り組みをする「日本で最も美しい村」連合に加盟しています。

東峰村のスペシャリストのお話

東峰村ツーリズム協会会長 小野豊徳さん
今回の訪問では、東峰村ツーリズム協会会長「小野豊徳」さんにガイドをして戴きました。旧小石原村生まれの元村役場職員という、東峰村のすみずみまで熟知した、まさに東峰村のスペシャリストです。小野さんは、スポット毎に四季折々の姿から、歴史や文化など一つ一つのストーリーをとても面白く丁寧に説明をして下さり、時間が経つのも忘れてつい聞き入ってしまいました。今回の訪問では、宝珠山地区の自然と小石原焼きの窯元を巡る3時間のガイドをお願いしていましたが、参加者からは「もっとガイドを聞きたい!」「時間が足りない!」という声が噴出するほど、楽しく、満足度が高いご案内を戴きました。ゆっくりと、心ゆくまで東峰村の魅力を知りたいという方は、4~5時間のガイドをお願いすると良いかもしれません。

ガイドをご依頼される場合は、東峰村観光ガイド(http://toho.main.jp/kanko-gaid.html)をご参照ください。

「平成の名水百選」に選ばれた岩屋湧水

岩屋湧水(平成の名水百選)
岩屋湧水は、福岡県で唯一の「平成の名水百選」で2008年に認定されました。湧水量は1日約15,000t、硬度は約31度の軟水で、とてもまろやかな口当たりが特徴です。地元の方も料理や飲み水として利用されており、お茶やコーヒー、日本料理などに、とてもよく合うそう。また、こちらの水を使って打った村のお蕎麦やさんはとても人気だそうです。
とてもまろやかな口当たり。ぜひ、普段の飲み水と比較してみてください。
自動給水機が設置されていて、約35L 100円で汲むことができます。遠くから給水にいらっしゃるファンも多いそう。一時期、九州北部豪雨で被害を受け給水できなくなっていましたが、現在は再開しています。500mlのペットボトルだと70本分と予想以上に多いので、給水タンクを準備して給水することをお勧めします。
岩屋湧水

福岡県朝倉郡東峰村大字宝珠山

http://toho.main.jp/iwayayuusui.html

天からの贈り物・「宝珠石」を祀るパワースポット!岩屋神社

入口
岩屋神社は、中国・北魏からの渡来僧「善正」が修行場「日子山(彦山・英彦山)」を開いた翌年の532年(継体天皇26年)に開かれ、空から降ってきたと伝えられる「宝珠石(ほうしゅせき)」をご神体とし、神仏が降臨する神聖な場所として修験者の重要な修行場でした。本殿は、国重要文化財に登録されています。巨大な岩を中心とした自然景観や石仏も見どころですが、椿やイチョウなど四季折々の移ろいも私たちの目を楽しませてくれます。
権現岩と云われる大岩の窪みに建てられた岩屋神社
岩屋神社本殿は、元禄11年(1698)に福岡藩四代藩主黒田綱政によって建立されました。建物は外殿とその中の内殿からなり、外殿は南面して桁行五間と梁間五間で茅杉皮重ね葺きの入母屋造りです。正面には参拝者用の桁行三間の向拝(ごはい)があります。外殿中央部にはご神体の「宝珠石」を安置し、その後方に三間社見世棚造の内殿があります。
外殿は権現岩と呼ばれる切り立った大岩のくぼみを利用して造られ、まるで岩にめり込んで見えるようなダイナミックな光景です。
岩屋神社の正面
巨岩・権現岩
西暦547年(欽明天皇8年)、宝珠石(「星の玉」とも呼ばれている)が岩屋に飛来したと伝えられています。
大きな光(権現岩)の懐に包まれ、宝珠石は、ご神体として岩屋神社に祀られ、延々と今日まで村人の心のふるさととして受け継がれています。宝珠とは、仏教用語で「何でも願いが叶う不思議な宝石」といわれています。
境内社 熊野神社本殿(国重要文化財)
熊野神社は、岩屋神社本殿よりさらに山の上にあり、大きな窟の中に建っています。 貞享3年(1686)に村民が建立した板葺き三間社流見世棚造りの社殿は、天狗が蹴って穴を空けたという熊野岩の険しい岩場に立てかけた懸(かけ)造りです。あたりは荘厳な雰囲気に包まれています。
岩屋神社

福岡県朝倉郡東峰村大字宝珠山字竹

http://toho-info.com/pl_hist/iwayajinja.html

めがね橋

めがね橋
JR日田彦山線の筑前岩屋駅~大行司駅には、三つのめがね橋が架かっています。昭和13年までに完成した多連アーチ橋で、近代土木遺産にも選ばれている美しい橋です。2017年の九州豪雨で日田彦山線の一部区間が被災したため、現在鉄道は走っていませんが、かつては四季折々の美しい景色の中を車両が走る様子を見るために、多くの方々がカメラを手に訪れたそうです。2020年8月現在、BRT(バス高速輸送システム)の導入が検討がされており、今後、美しい自然の中、めがね橋の上をバスが走る特別な光景が見られるかもしれません。
めがね橋

福岡県朝倉郡東峰村大字宝珠山

http://toho.main.jp/meganebashi.html

「日本の棚田百選」に選ばれた竹地区の棚田

竹地区の棚田(日本の棚田百選)
約400年もの歴史がある石積みの棚田400枚は、谷間のわずかな空間を農地として上手に利用するための、昔の人の知恵と努力の結晶です。5月末の田植の後は、棚田に張った水に夕日が反射し 幻想的な風景がみられます。6月のホタル、8月の瑞々しい稲穂が風にたなびく姿、9月の黄金色の棚田、雪に覆われた静かな棚田など、1年を通して楽しむことができます。
竹の棚田は、形状・連続性・保存状態などがいずれも際だっていることから、平成11年7月に農林水産省の「日本の棚田100選」に認定されました。
竹地区の棚田

福岡県朝倉郡東峰村大字宝珠山字竹

http://toho.main.jp/tanada.html

太田熊雄窯(おおたくまおがま)

太田熊雄窯
小石原焼・髙取焼などの個性豊かな日常使いの陶器が揃う東峰村。今でも40を超える窯元で、多くの職人さんがものづくりを行なっています。
ここ、太田熊雄窯を開窯された太田熊雄氏は、かつてベルギーの万国博覧会でグランプリを受賞するなど、民陶作家として数々の賞を受賞されました。その志は息子の太田孝弘氏(黄綬褒章受章)と孫の光廣氏に引き継がれ、現在もダイナミックさや美しさを活かした個性溢れる作品は高く評価されています。
登り窯 各部屋に作品を並べた後、レンガで入り口をふさいで、薪をくべて焼き上げるそう。
太田熊雄窯で「登り窯」を拝見させていただきました。現在、焼き物の焼成は品質が一定でコストが安い「ガス釜」や「電気釜」が一般的となっており、労力がかかり、品質にも差が出る昔ながらの「登り窯」は、貴重となっています。「登り窯」は、斜面に沿って燃焼室といくつかの焼成室が連結した形状をしており、一番下の燃焼室でくべた薪の熱が連結する焼成室に次から次へと登っていき、作品を焼き上げる仕組みだそう。24時間体制で数日間薪を調整しながらくべ続けるため、たいへん労力がかかるのですが、焼きすぎたり、灰を被ったりする作品もたくさん出てしまうなど、焼き加減がとても難しいそうです。ただ、そんな中でも、稀に「登り窯」ならではの趣のある逸品に出逢える瞬間が何より嬉しく、作り手冥利に尽きる、とのお話でした。
今回お話を伺って、一つ一つの作品に作り手さんの心が込められていることを知ることができ、より愛着を持って使いたいと思いました。
お店には、日常使いのうつわが並びます。落ち着いた色合いの中に、ダイナミックな個性があり、毎日の食事を華やかに彩ってくれそうです。
ほっとする癒しのひとときを与えてくれそうな、素敵なコーヒーカップです。
ぜひ、あなだたけの特別な1枚を、さがしにきてください。
太田熊雄窯

福岡県朝倉郡東峰村小石原729-4

http://toho-info.com/po_kama/k11_oota.html

マルダイ釜

古くから小石原焼の窯元が集中するエリアにある「マルダイ窯」は、江戸時代から続く小石原焼の窯元で、立派な茅葺屋根の古民家が目印です。可愛いワンちゃんも迎えてくれました。
目の前で繰り広げられるロクロの実演は、次から次に、まるで魔法のように作品が形作られ、思わず目を奪われます。飛び鉋(かんな)や刷毛目、櫛描きといった伝統技法を受け継ぐ作品の数々は、「使いやすく、手になじみやすいものを作るように心がけている」といったご主人の人柄を表すように、素朴なあたたかみに満ちています。
料理を主役として引き立ててくれる、素朴であたたかなうつわの数々が並びます。毎日の食事を豊かにしてくれるお気に入りの一枚を、ぜひ見つけに来てください。
マルダイ窯元

東峰村大字小石原766

http://toho-info.com/po_kama/k06_marudai.html

終わりに

福岡市内から車で約1時間で訪れることが出来る東峰村。今回、都会の喧噪を離れて、澄みきった空気と生命力溢れる自然の中で、すっかり身も心も癒されました。先人の知恵の賜物である美しい石積みの棚田や、天からの贈り物「宝珠石」を祀るパワースポット・岩屋神社を擁する宝珠山地区、古来より連綿と受け継がれてきた伝統の技が息づく小石原地区を訪れましたが、1つ1つのスポットに重要な歴史や大切なストーリーが眠っており、ただただ新鮮な驚きと発見の連続でした。
一方で、古くから先人たちのたゆまぬ努力により守られてきた美しい日本の景観や文化を、後世へ引きついでいくために、私達はどうしていくべきか、と考えさせられるきっかけともなりました。
東峰村は、さまざまな魅力が随所に散りばめられた宝箱のようなエリアです。福岡市内から、日帰りのショート・トリップで訪れることができる場所なので、ぜひ、みなさんも足を運んでみてください。

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