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温泉だけじゃない!日本遺産の米どころ菊池川流域の山鹿で楽しむ「お米の旅」

平成29年4月、菊池川流域の二千年にわたる米作りをテーマとした物語が文化庁の日本遺産に認定されました。阿蘇外輪山を源に有明海まで続く菊池川の流域は、清らかな水と肥沃な大地が織りなす米どころ。今も米作りがもたらした多彩な芸能や食文化が息づいています。今回は、町の中心部に菊池川が流れる山鹿で日本遺産“米作り、二千年にわたる大地の記憶〜菊池川流域「今昔『水稲』物語」”を体感する旅に出かけました。

お米をテーマにした町歩き「米米惣門ツアー」

白壁の伝統的建造物が残る豊前街道の下町惣門地区

熊本県北部に位置する山鹿市の中心部は、安土桃山時代から江戸時代にかけて、熊本の城下町と北九州の小倉を結ぶ豊前街道の宿場町として栄えました。かつて「山鹿千軒たらいなし」と謳われた、湯量が豊富な山鹿温泉もあります。菊池川流域は古くから良質なお米の産地。町の中心部に菊池川が流れる山鹿は、そのお米が船で運ばれてくる集散地として江戸時代に発展しました。豊前街道に面した下町惣門地区には、明治時代以前は米問屋だった酒蔵や、江戸時代創業の麹屋など、お米にまつわる老舗が現存。往時の雰囲気を今に伝えています。

木屋本店の店内には米麹を使った味噌や甘酒がずらりと並ぶ

「米米惣門ツアー」はそんな下町惣門地区で地元ガイドと一緒に町歩きを楽しめるツアー。街道沿いに点在する酒蔵や麹屋、せんべい工房などを約1時間で巡ります。まずは天保年間(1830〜1845年)創業の麹屋「木屋本店」へ。奥行きのある趣ある建物は、まさに“うなぎの寝床"といった感じです。中に入ると、味噌や酢、甘酒などの商品が並んでいます。創業から約190年以上の歴史を持つ木屋本店では、室蓋などを使用した伝統製法を継承し、菊池川流域のお米を使った麹づくりを行っています。味噌や甘酒などをお土産に購入することも可能です。
続いて熊本で純米酒づくりの先駆け的存在として知られる「千代の園酒造」へ。漫画「美味しんぼ」で銘酒として紹介され、全国の左党から注目を集めた酒蔵です。敷地内に資料館もあり、酒造りに関する道具や歴史を紹介するパネルを展示。特に、巨大な酒樽は迫力満点です。

せんべい工房で米せんべい焼きを体験(提供画像)

ツアーで人気を集めているのが米せんべい焼き体験です。「せんべい工房」は熊本県産の米や天然塩にこだわった手作りせんべいの店。体験では専用の窯を使って手焼きします。小さじ1杯ほどの生米が、あっという間に香ばしいせんべいに焼き上がることに感激。焼きたてはサクッとした食感で、お米の風味が格別です。店内にはエビや塩、海苔など5種類のせんべいが販売されているのでお土産におすすめです。

米米惣門ツアー(申込先:山鹿温泉観光協会)

熊本県山鹿市中央通510-2

http://comecome-soumon.com/guide.html

明治ロマンあふれる芝居小屋「八千代座」

八千代座は風格ある木造2階建て。国指定の重要文化財

菊池川流域の米文化に触れた後は、山鹿のシンボルの一つで、町の中心部にある八千代座へ。地元有志が力を合わせて1910(明治43)年に建造した芝居小屋で、設計・施工も地元の人が手がけています。当時の山鹿は、菊池川の水運や豊前街道など、九州における交通の要衝として栄え、さらに湯量豊富な温泉地であることで大変賑わっていました。

八千代座の天井画。呉服商や酒屋の広告など、約60枚が並んでいます

木戸口をくぐって芝居小屋の内部に足を踏み入れると、花道をはじめ、桟敷席や升席、廻り舞台など、本格的な歌舞伎小屋の特徴を備えた空間が広がっています。客席には傾斜が付けられていて、後ろの席の人たちも舞台が見えやすいような工夫が施されています。なかでも目を引くのは天井の広告画。天井一面に極彩色で描かれたレトロタッチの広告画は圧巻です。中央には豪華な真鍮製のシャンデリアが。非日常感あふれるその空間に立っていると、明治時代にタイムスリップしたような気分になれます。

奈落では廻り舞台を動かすためのドイツ製レールを見学できる

舞台下の奈落や楽屋などの見学も可能。狭い階段を降りると、空気がひんやりとした奈落へ。廻り舞台を支えるドイツ製のレールなど、華やかな芝居小屋の裏舞台をじっくり見ることができます。
ところで、昭和初期まで活況を呈した八千代座は、昭和40年代になると建物のあちこちが老朽化し、廃屋寸前の状態に。そこで立ち上がったのが八千代座の華やかだった時代を知る地元の老人会です。復興のための寄付活動を展開し、それが若者の間にも広がり、山鹿全体に一大ムーブメントを巻き起こします。そこには“古き良きものを大切にする"という山鹿市民の気質が関係しています。

八千代座

熊本県山鹿市山鹿1499

https://yamaga.site/?page_id=2

菊池川流域育ちのお米を満喫できる「卑弥呼醤院」

卑弥呼醤院併設の茶房さくらさくらで味わえる無農薬米のおにぎりや味噌汁

お腹が空いたら、菊池川流域で育ったお米のおいしさをダイレクトに味わえる「卑弥呼醤院」へ。八千代座から車で約15分の卑弥呼醤院は、江戸末期に酒造所として創業。大正時代に入り、その麹造りの技術を生かした味噌・醤油造りを始めた老舗です。併設の茶房さくらさくらでは、自家製金山寺味噌や座禅豆などの小鉢が付いた無農薬米のおにぎり360円を提供。シンプルなおにぎりだからこそ、菊池川流域のお米のおいしさをより実感できます。そのほか、全15種の味噌からお好みの味を選び、一杯立てで注文する味噌汁も絶品です。

卑弥呼醤院 茶房さくらさくら

熊本県山鹿市鹿本町来民1586

https://yamaga-tanbou.jp/spot/6127/

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