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話題の観光列車「36ぷらす3」が特別停車する秘境の駅「宗太郎駅」へ行ってみた!

大分県佐伯市宇目に知る人ぞ知る有名な秘境駅があるそうです。その名も「宗太郎駅」。駅名にしてはちょっとユニークな名前なので気になってしまい、足を運んでみることにしました。しかもJR九州の新しい観光列車がやってくる土曜日に行ってきました!

宗太郎駅ってどんな駅?

宗太郎駅全景。右手が1番ホーム、左手が2番ホーム。そして奥に見えるのが跨線橋
大分県佐伯市と宮崎県の境に位置する「宗太郎駅」は、国道10号から集落内の旧道に入った場所にあります。2面2線のホームのある無人駅で急峻な山越え区間(通称:宗太郎越)にあり蒸気機関車の時代にはスリップして前に進まないこともよくあり、日豊本線最大の難所だったそうです。もともとは信号場として開業し1947年から旅客扱いをするようになり、現在では普通列車が大分方面への上り列車が2本、鹿児島方面への下り列車が1本の1日3本のみ停車しますが、列車の本数が少なく秘境駅として知られています。
この「宗太郎駅」の名前は、かつて岡藩(江戸時代の岡藩中川氏の領地)が持つこの近隣の山を巡回していた「洲本宗太郎」に由来するそうですが、一部の鉄道ファンの間では隣の重岡駅と合わせると「重岡宗太郎」という人名になることで有名です。
駅周辺には人家か数軒ほどあり、その間にある小さな道(町道)を登ったところに「宗太郎駅」があります。駅を示す標識はなく以前は木造の駅舎がありましたが現在は撤去されていて、駅がどこにあるか分かりづらいかもしれません。

秘境駅「宗太郎駅」を歩いてみよう

運賃箱と時刻表
民家の間の狭い道を登ると宗太郎駅1番ホームにたどり着きます。駅舎跡に置かれた電話ボックスとその先には運賃箱と運賃表があります。
小さくて見づらいかもしれまえんが、写真中央にイモリが(写真左)。2番ホームの屋根付き待合所(写真右)
跨線橋を渡ると下りの2番ホームで、山側には「イモリの池」と呼ばれている小さな池があり、覗いてみると池の中をスイスイと泳ぐイモリが居ました。2番ホームには屋根のついた待合所もあり、ベンチの端には駅ノートと筆記用具が置かれ、訪れた人たちの寄せ書きがありました。
寄せ書きノートとメッセージの書かれた石。秘境駅は人を詩人にするのかもしれません
ノートには2010年からの書き込みが残っていました。また待合室のベンチの背には「よく来たな」「やっと見つけたよ」など、それぞれの想いが描かれた石が並べられています。
さらに散策を続けると、信号場だった宗太郎駅を旅客駅にすべく尽力した西畠勤駅長の功労記念碑も発見しました。
西畠勤駅長の功労記念碑

実はJR九州の新たな観光列車「36ぷらす3」が停まる駅

1番ホームに入ってくる特急「にちりん」
JR九州が2020年10月16日(金)から運行を開始した黒い787系特急「36ぷらす3」ですが、この宗太郎駅に停車するってご存じでした?「36ぷらす3」は九州の魅力を再発見し、九州をより深く楽しんでいただきたいとの思いでスタートした観光列車で、土曜日ルート「緑の路」が宗太郎駅とお隣りの重岡駅に停車します。宗太郎駅での停車時間は約10分と少しの間ですが、乗客は秘境駅の雰囲気を楽しむことができます。
特急「36ぷらす3」を運行させる前に、この車両をデザインした水戸岡鋭治氏が乗車され、宗太郎駅と重岡駅に降り立ったそうです。そしてその時、この自然が豊富で緑豊かな場所に乗客の皆さんが降りた時のことをイメージし、また「36ぷらす3」が秘境駅に入ってきた時のことを想像したときに、「ここだ!」ということで「宗太郎駅」が停車駅として決定されたそうです。
また宗太郎駅では、「36ぷらす3」と同型の787系車両を使う特急「にちりん」が上り線、下り線の両方で行き違う場面も見ることができるそうで、鉄道ファンに喜ばれているとか。ただし、特急列車がたびたび通過するので、ホームでの撮影にはくれぐれもお気を付けください。
ホームにもきちんとご注意の案内がありますが、撮影の際は安全な場所で

いよいよ「36ぷらす3」が到着!

宗太郎駅に特別停車する「36ぷらす3」
世界で36番目に大きい島、九州全県を巡る「36ぷらす3」の全ルートの走行距離は、1198キロ。JR九州では、『この列車で、驚き、感動、幸せをお届けし、「お客さま、地域の皆さま、私たち」でひとつになって、39(サンキュー!)=「感謝」の輪を広げていきます』と世界一大きい感謝の輪を描いていくという想いがあるそうです。
宗太郎駅に入ってくるこの電車を一目見ようと県内外より子供から大人まで集まっていました。
そしてついに!遠くから線路を走る列車の音が聞こえはじめ、その音がだんだんと大きくなりカーブを曲がって「36ぷらす3」が現れました。つやのあるメタリックな黒い外観の「36ぷらす3」が宗太郎駅の1番ホームに到着します。「36ぷらす3」からは多くの乗客が降り立ち、秘境の駅の風景や停車している「36ぷらす3」の撮影をしていました。
普段は人影まばらな宗太郎駅が賑わいます
ちなみにこの日は68名の乗客が宗太郎駅内を散策されていました。またあいにくの雨模様で、本来ならば「重岡駅」で佐伯市宇目産の和栗を用いた生どら焼き、ジャム等の特産品の販売が行われますが、この日は宗太郎駅での販売となりました。
客室乗務員の鳴らすベルが出発の時を知らせます
出発の5分前になるとハンドベルを持った客室乗務員がベルを鳴らし、乗客は列車に戻ります。
宗太郎駅は1日の平均乗降客数が1人にも満たない無人駅で、とても静かな、鳥のさえずりぐらいしか聞こえない大自然に囲まれた駅ですが、36ぷらす3がやってきたとき、普段の姿が嘘のような賑わいでした。駅に集う人々は皆、大人が童心に帰る瞬間の気持ちだったのかもしれません。子供の頃のようなワクワク、ドキドキを体験しに、土曜日の宗太郎駅へぜひお出かけください。
宗太郎駅

大分県佐伯市宇目大字重岡字宗太郎

https://www.jrkyushu.co.jp/railway/station/1191650_1601.html

宗太郎駅まで行くなら、こちらもおすすめ!

自然の芸術ともいえる渓谷美が見事な藤河内渓谷
宗太郎駅は宮崎県との県境にほど近い佐伯市の「宇目エリア」にあります。そしてここまで来たのならぜひ立ち寄ってほしいのが「藤河内渓谷」。
2017年6月に登録された「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク」の見どころの一つで、巨大な花崗岩の一枚岩を桑の原川が刻んだ渓谷美は圧巻です。夏にはキャニオニング、秋には紅葉も楽しめます。
藤河内渓谷

大分県佐伯市宇目大字木浦内

http://saiki-kankou.com/ume/2018/07/1411

道の駅 宇目(写真提供:佐伯市観光協会)
藤河内渓谷から車で約30分のところにあるのが「道の駅 宇目」。こちらには農林産物直売所、レストラン「うめりあ」の他、祖母・傾・大崩ユネスコエコパークの情報が手に入る「宇目エコパークセンター」が併設されています。
道の駅 宇目の2大名物、こぶし大のジャンボからあげと大分有数の栗産地・宇目ならではの「くりソフト」はぜひお試しください!
宇目エコパークセンター(写真左)と人気のからあげ&くりソフト(写真右)
道の駅 宇目

大分県佐伯市宇目大字南田原2513-5

http://www.qsr.mlit.go.jp/n-michi/michi_no_eki/kobetu/ume/ume.html

ととろのバス停(写真提供:佐伯市観光協会)
そしてもう一つ、宇目エリアで外せないのが「ととろのバス停」。
佐伯市宇目には「轟」と書いて「ととろ」と読む地区があり、「ととろ」というバス停があります。映画「となりのトトロ」の公開から約9年後の1997年、誰かが映画で登場したキャラクターの看板をバス停のところに置いたことから「ととろの里」と知られるようになったそうです。2013年には路線バスは廃止されましたが、今では佐伯市のコミュニティバスの停留所として利用されています。バス停の近くには、「ととろの森」と呼ばれる、小さなトトロが木の枝などに並べられた撮影スポットもありますので、アニメファンの方におすすめです。
秘境駅「宗太郎駅」にお越しの際はぜひ宇目エリアの見どころも一緒にお楽しみください。
ととろのバス停

大分県佐伯市宇目大字南田原轟

http://saiki-kankou.com/ume/2014/02/1430

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