こんなにあるの?!ディープな九州隠れ古墳10選巡り

いわとやまこふん

岩戸山古墳

古代ロマン度(おすすめ萌え度):★★★★☆
古墳にコーフン度(美しさ度):★★★☆☆
イケフン度(知名度):★★★★★

豪族連合の盟主が眠る九州北部最大級の前方後円墳

岩戸山古墳の画像

雄大な墳墓の区域に阿蘇凝灰岩で造られた石製品を配列

国史跡内/前方後円墳=墳丘長約135メートル/後円部の高さ約18メートル
築造=6世紀前半
4~7世紀にかけての古墳300余り基からなる八女古墳群の一つで、九州北部における最大級の前方後円墳。日本の古墳は埋葬者が不明な場合がほとんどです。そんな中、この古墳は6世紀初め頃の有力者であり、ヤマト王権に反乱した筑紫君磐井(つくしのきみいわい)の墓だということが分かっている珍しいケースです。さて、出土品の円筒埴輪(はにわ)や、九州で特徴的に見られた石製品(人物・動物・器財)などは、筑紫君磐井がどんな人物だったのかヒントをくれるのでしょうか。

動画

遺跡が語るヤマト王権への反乱の記憶!そこに眠るのは反逆者?それとも英雄!?
岩戸山古墳の被葬者とされる筑紫君磐井が、527年(継体天皇17)にヤマト王権に対して反乱を起こした動機にはいくつかの説があります。もともと反乱の機会を窺っていたところ、朝鮮半島の新羅(しんら)から賄賂をもらって挙兵したとする説(『日本書紀』)、あるいは支配を強めようとするヤマト王権に反発して周辺の諸勢力とともに抵抗したとする説(『筑後風土記』逸文・いつぶん)などで、磐井は『日本書紀』によれば反逆者、『風土記』によれば英雄となります。
生前から造られたというこの雄大な墓の規模、そこへ配された多量の石製品や埴輪などの出土品。ヤマト王権にとっては逆賊だとしても、残された遺跡や遺物は、少なくとも磐井が九州豪族連合の堂々たる盟主であり、この地方の英雄だったことを伝えているかのようですよね。

石製品(石人像・石盾などのレプリカ)の画像

石製品(石人像・石盾などのレプリカ)

石製品(レプリカ)の画像

石製品(レプリカ)

消えた石人・石馬像の謎
人物や馬などをかたどった石人・石馬像は阿蘇凝灰岩(あそぎょうかいがん)で造られていて、周辺やその南方などの遺跡によく見られますが、岩戸山古墳以後に造られた古墳では急速に姿を消していきます。
磐井の乱平定後、ヤマト王権から製作を禁止されたか、あるいは単に流行が衰退したのか、その真相は謎のまま…
この石人像が衰退した頃から装飾古墳が増えていくため、墳墓を飾る様式が古墳内部に移っていき、装飾古墳が増えたとする説もあります。どちらの古墳もそれぞれの味わいがあり、甲乙つけがたいですね。なお、遺物の多くは八女市が所蔵していますが、いくつかは大学の研究室や東京国立博物館などに収蔵されています。

石馬(せきば)の画像

岩戸山歴史文化交流館に展示された伝岩戸山古墳出土の「石馬(せきば)」。頭部と脚部は欠失していますが、体側には鐙(あぶみ)が刻まれていて、当時の馬具を伝える貴重な資料です。正福寺蔵。福岡県指定有形文化財。

微笑む武人像?
出土した石製品には石人、石馬のほか、盾や靱(ゆぎ・矢筒)などの器財をかたどった石像があり、岩戸山歴史文化交流館ではそれらを見学できます。
画像は勇ましいはずの武人像ですが、口元がほころんでいるようにも見えます。穏やかな目で、こちらに微笑んでいるかのように見えて癒されちゃいますね。堅く構えがちな歴史遺産の中にこういうクスッと笑える隠れキャラを発見できるのも、古墳巡りの楽しいところです。

靱を背負う石人の顔部分の画像

「靱を背負う石人」の顔部分。

靱を背負う石人の全体像の画像

全体像。国指定重要文化財。

忘れ去られた真説「磐井の墓」
岩戸山古墳は誰が埋葬されているか分かっている珍しい古墳、と紹介しましたが、最初からスムーズにそれが判明したわけではなかったんです。江戸時代の国学者たちは『筑後国風土記』逸文の記述から、当初は石人山古墳が磐井の墓だと推察。それが広まって、昭和初期まで「石人山古墳=磐井の墓」が通説とされていました。
ところが終戦(1945年・昭和20)後、改めて『風土記』が検討された結果、古墳に関する特徴が岩戸山古墳に合致することがわかり、やがて通説を覆して「岩戸山古墳=磐井の墓」だと判明したのです。
しかしそれより以前、この結論にたどり着いていた武士がいました。久留米藩藩士の矢野一貞(かずさだ・1794年・寛政6~1879・明治12)です。
矢野は『風土記』の検討や地名の考証、あるいは現地での実測や独自の調査を重ね、「岩戸山古墳=磐井の墓」と結論付けました。
しかし、残念!いわば無名の学者にすぎない矢野の説は光を浴びることなく、惜しくも忘れ去られていってしまったのです。

古墳見学の後はお茶しませんか?
八女といえば、言わずと知れた日本有数のお茶の産地です。広い敷地の岩戸山古墳を散策した後は、おいしい八女茶でリフレッシュ!八女のここかしこで見られる茶畑にも癒されます。

八女茶中央大茶園の画像

アクセス

電車で行く場合

JR久留米駅、西鉄久留米駅より八女行きバス「福島高校前」下車

車で行く場合

八女インターから国道442号・国道3号経由で約15分
広川インターから国道3号経由で約10分