長崎県西彼杵半島の北部にある、海に囲まれた自然の宝庫・西海市。その西海市の大瀬戸町に昔ながらの音を楽しめる場所「音浴博物館」があります。長崎駅、佐世保駅からそれぞれ車で約1時間。山奥の静かな森の中で“森林浴”と音楽を浴びる“音浴”ができるレトロな安らぎの空間をご紹介します。
音浴博物館がある大瀬戸町久良木(きゅうらぎ)地区は、第二次世界大戦後、旧満州からの引揚者が移り住んだ開拓部落でした。その頃できた小学校の分校は、廃校後にベトナム難民救援施設となり増築、現在の3つの建物になりました。その後、しばらく空き家になっていたこの施設を、栗原榮一郎さんが気に入り岡山から移住。コレクションしていた大量のレコードなどを運び込み、平成13年(2001年)にオープンしたのがこの「音浴博物館」なのです。
館内は、かつての分校の面影を残し、昭和のレコードや蓄音機など懐かしい展示物が飾られています。そんな昭和の雰囲気が広がる空間で、アナログの音を心ゆくまで堪能することができます。
博物館を訪れたら、まずは博物館の入り口「エントランスホール」へ。受付を済ませると、博物館の方が30分ほど館内を案内してくれます。エントランスホールには建物の歴史を物語る写真やエジソン式の蓄音機、ジュークボックスなどがあり、コーヒーやラムネなどのドリンクも販売。
ジュークボックスもまだまだ現役。硬貨を入れて懐かしのヒットパレードを自分で選曲して聴くことができます。ここには長崎を代表するアーティストの幻のレコード盤も。ジュークボックスでそのレコードが聴けるのは世界でここだけ。ファンの方は要チェックです。
エントランスホールから左へ渡り廊下を渡ると「蓄音機の館」が。ここには約1万枚のSPレコードと50台以上の蓄音機が置いてあります。それらと一緒に昭和の懐かしい道具や器具、楽器なども数多く展示されていて昭和の生活が偲ばれる場所でもあります。明治時代に作られた片面だけの珍しいレコードも発見!
館内にあるレコードは、自分で選んで実際に蓄音機で聴くことができます。数あるレコードコレクションの中から実際に自分でレコードを手に取り、曲を聴くことができる場所は全国でも珍しく、当時の録音を当時の機器で楽しむという貴重な体験ができます。
企画展示が行われている「ギャラリースペース」と、LP盤・EP盤レコード合わせて約16万枚のコレクションの一部を展示・公開している「LPホール」へと進みます。
博物館の一番奥には「イベントスペース」があります。もともと難民寮の食堂だったそうで、とても広い空間になっています。ここではレコードコンサートを開催したり、ツアーの団体客や個人のお客さんに異なるスピーカーの音の違いを体感してもらったり、アナログの音の世界が体感できる場所になっています。
JBLやタンノイなど高級スピーカーも実際に鳴らすこともできるのですから驚きです。デジタルやアナログの音の違いなどが顕著に分かり、スピーカーによっては、歌手が目の前で歌っているかのような錯覚に陥りそうになります。また、世界遺産と呼ばれる1950年代のビクターオーディオラもあり、博物館スタッフにお願いするとその音も聴かせてもらえるのですから、ファンにはたまりません。このビクターオーディオラはあの有名なエルビス・プレスリーが実際に聴いたスピーカーと言われ、写真も飾られています。
こうした名機もあったり、2トラックオープンリールレコーダーやVHSのコレクション、ベートーベンやバッハといった有名音楽家たちの画が飾られていたりと、音楽室のような雰囲気の中、なんだかタイムスリップした気分になりそうです。
価値の高い展示物の数々を見るだけではなく、実際に自分でレコードをかけて好きな音楽を聴けるという希少な体験ができる「音浴博物館」。メディアにも数多く取り上げられ、全国からファンが集まり、この山奥へ年間8000人近くもの来館者が訪れます。中にはお弁当を持って開館から閉館までずっと博物館にいる方や常連さんも。皆さんもぜひ一度、懐かしの昭和のレコードから流れる、アナログのサウンドシャワーを浴びに来てみませんか。
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